【テニプリ】聞く耳もたらすーその3【男主】

世話焼きも手を焼くーその5 ページ13

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丸井先輩とラリーを続ける。
てか、これは綱渡りする為の前座でしかないのに丸井先輩が全然手を抜いてくれねぇ！

耳栓を両耳外した俺は丸井先輩の球に翻弄されつつ、必死に距離を詰めていく。


「綱渡り」はネットの上をボールが転がり、そしてこちら側にネットすれすれで落ちる技だ。ネットの前まで詰め寄らないと打ち返すチャンスは来ないだろう。


俺はラインまで詰め寄って、「綱渡り」が打ちやすい様に軽くボールを打ち返す。
それに気付いた先輩が、降る腕を微妙に変える。


さぁ、どっちだ。



(左か！)



独特のフォームの体の摩擦音を聞き取って、俺はネットのぎりぎりまで詰め寄る。


先輩のガムを膨らます音が聞こえて、ボールがネットに乗っかる。


「…妙技、｢綱渡り｣」


俺は半ばスライディングして、そのボールの近くへ寄り片膝をついた。

そして左腰にラケットを携え、刀を鞘から出す前の様なポーズを取る。



ボールのネットを渡る音が代わり、ボールがこちら側に落ちてきて、


(まだ慌てるな…慌てるな… )



落ちるボールは、ネットに当たってる音がする。


それでネットが揺れて、ボールがほんの少しだけネットから離れた瞬間を、俺は見逃さない。




ぐっ、と片膝をついたまま、刀に見立てたラケットを鞘から抜くような形で振り上げる。

打たれたボールは高く高く上がって、呆気に取られる丸井先輩の上を通り越していく。
そして丸井先輩から最も遠いコートの右側ぎりぎりですとんと落ちた。

ボールが落ちると同時に先輩の膨らましていたガムが弾ける。


俺は先輩を見て、そのポーズのままニヤリと笑って言った。


「…妙技、「綱切」」


そして赤也先輩の歓声が後ろから聞こえてくるのを聞きつつラケットを支えに立ち上がって、丸井先輩にラケット突きつける。


「どう？天才的？」


「っ、はは、てめぇ…！」


丸井先輩が汗を頬に零して笑ったので、俺はふん、とドヤ顔をしつつまたラケットを刀を鞘に収めるように左腰に持ち直した。


「返しましたよ、どうだ！」


「いやー参った！しかもちょっとかっこよかったぜぃ！」


「Aーーー！！よくやった！！」


「えへへ！
…でも、まずダブルスじゃジャッカル先輩が確実に取るだろうしあの遅さなら先輩でも取れるからもう使えませんね…」


「でもいい！すっきりした！」


赤也先輩が大喜びで俺の頭をぐしゃぐしゃに来ている向こうで、ちらりと見えた金髪さんもなぜかはしゃいでいた。

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