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ページ39

 
 
 
 
「11番街! 白の部屋から脱走者が出た回だな。
 結局あれは見つかったのか?」

そう問いかけられた彼は首を横に振る。

「いえ···この島は広いですから。
 しかし周りは一面の海···自力で帰ることはまずできません」
「もう死んでいるだろう。次」

彼の返答を適当にいなして一人がそう言う。
すぐにピッと音がして画面が切り替わった。
映っているのは満面に喜色と笑みを携えた路々森ユズ。

「···路々森はご存じで」
「ああ、彼女はよく知っている」
「もう三年か」
「よく気が触れずにいるものだ」

疑問と言うには確信がありすぎる彼の言葉に、
今度は周りの面々が口々に応えた。
同調するように彼も口を開く。

「彼女はもとより少し壊れておりますゆえ」

そして最後。

「それで」

また画面が変わり、そこに現れたのは、
写真を撮るようなのでとりあえずピースしましたと言うような入出アカツキ。

「これはなんだ?」

そのわかりきった問いかけに、彼もまたわかりきったことを答える。

「入出、アカツキでございます」
「そんなことは承知だ」

苛立ちもあらわに次々と疑問が浴びせられる。

「「マダラメ」はまだ戻らないのかと聞いている」
「そうだ」
「このまま定着したら話にならんぞ」

ゆったりと落ち着いた、言ってしまえば横柄な態度で、彼はまた回答する。

「大丈夫でございますよ」

そんなことはあり得ないと、わかりきったように否定して。

「彼は約束を破ったことはございませんので」
 
 
 
いつしか定例会議は終わり、
真っ黒い部屋から人がひとり、またひとりと減っていく。
誰もいなくなった部屋に背を向けて、足音をコツコツ響かせて。
彼も、パカもまた部屋を出ていく。
部屋の明かりを消そうとする去り際に、
こんなことを呟いて。
黒く塗りつぶされた部屋には、彼の独白が漂っているようだった。

「そう。お楽しみはこれからでございます」

······沈黙を貫く部屋にもし意志があったなら。
パチ、と明かりを消した彼の、手袋と袖口から垣間見えた、
黒い火傷の跡を、印象に残したかもしれない。
 
 
 

作者より→←*



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花藺 - 霧神廉さん» ひ、久々に覗いたらこ、コメントが・・・。本当にごめんなさい。そしてありがとうございます。待っててくださいね!頑張ります! (2018年3月21日 22時) (レス) id: 78c6e1698f (このIDを非表示/違反報告)
霧神廉 - 更新停止は寂しいですが、僕はいつまでも待ってます! (2018年3月10日 22時) (レス) id: cff83fd718 (このIDを非表示/違反報告)
花藺 - 霧神廉さん» 嗚呼、なんてありがたいお言葉・・・っ!頑張ってきてよかった・・・。これからも頑張ります!o(`^´*) (2018年2月14日 20時) (レス) id: 60a7600913 (このIDを非表示/違反報告)
霧神廉 - 面白いです。更新頑張って下さい! (2018年2月14日 20時) (レス) id: 957f042b23 (このIDを非表示/違反報告)
花藺 - 名無しの猫さん» あああありがとうございますぅぅぅ!これからも更新頑張ります!応援よろしくお願いいたします! (2018年2月12日 13時) (レス) id: 60a7600913 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:花藺 | 作成日時:2018年1月12日 22時

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