ナカノヒトゲノム【実況中】ゲームの中の迷い人

＊ ページ37

　
　
　
　
黒、黒、黒。
周囲一面、見渡す限り黒く染まったひとつの部屋。
プロジェクターによって映された映像のみが部屋に彩りを添えている。
その映像にも、画面の中央にたった今“Fin”と浮かんだ。
画面の前に特徴的なアルパカの頭の男が立ち、口を開く。

「ではこれより、定例会議を始めます」

それを合図に、円形のテーブルを囲んで席に座していた幾人かの
人影······こちらもやはり動物の被り物をしている彼らが口々に話し始めた。

「今回のメンバーは従順だな。
　12番街など抑え込むのに数日は要しただろう」
「そうそう、おかげでまともなゲームにならなかった」

ただひとり立っている彼も同意を示すように頷いた。

「ええ···
　今回は前回の反省点を生かし意図的にそういう者たちを選びました」
「ほう···」
「というと?」

他の者たちに説明を促され、彼は言葉を重ねる。

「件(くだん)の素質はもちろん、
　帰還願望が薄い、またはまったくない者たちです」

画面に実況者たちの顔が映る。
　
　
　

＊→←＊

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す