検索窓
今日:7 hit、昨日:8 hit、合計:70,603 hit

ページ29

 
 
 
 
目の奥に、明確な恐怖が宿った。
散った紅が床にピトリと落ちる。

「生意気なのよ! ただの! 人形の癖に!」

肩を勢いに任せて押された彼は、抵抗もせず床に倒れる。
彼女の脚が伸びてきて、レオのお腹を踏みつける。

「かふっ」
「気に喰わない。でも······」

踏みつけたまま憫笑した。

「すっごく弱いわ。おじいちゃんに頼むまでもない」

その憐れむような笑みが恐ろしくて。
痛む腕を無視して、這いずって逃げ出す。
脚の下から抜け出した彼は、転がるように逃げていく。
走って曲がって。
そこには、階段があった。
なんの因果か。彼は随分階段に嫌われているのかもしれない。
つんのめるように階段を転げ落ちて。
体の節々に痛みを感じながら、彼の意識は真っ黒な闇に吸い込まれた。

―――
――――――
――――――――――――

鬼のアジトから数百メートル。
組まれた薪に、大きな炎がパチパチとはぜている。
番をしているアンヤが新たな薪を放り込む度、
その炎は明々と燃え上がり、夜闇を舐めとっていく。
上がる狼煙は天高く。
これが、アジトに向かった彼らへの道しるべだ。
パチンと時折弾ける焚き火を見つめるアンヤの後ろで
ヒミコはコソコソ、そっとおにぎりを置いている。

「いらねーよ」

思いもよらない反応にヒミコはビクッと肩を揺らす。

「ピ···ピーマンは入ってません。おかっ、おかかですっ」

おどおどしながら答えた彼女に、アンヤは長く溜め息をついた。

「そうじゃねーし」

手を受け取るように差し出した。おにぎりを受け取るということらしい。
 
 
 

*→←*



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (44 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
89人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

花藺 - 霧神廉さん» ひ、久々に覗いたらこ、コメントが・・・。本当にごめんなさい。そしてありがとうございます。待っててくださいね!頑張ります! (2018年3月21日 22時) (レス) id: 78c6e1698f (このIDを非表示/違反報告)
霧神廉 - 更新停止は寂しいですが、僕はいつまでも待ってます! (2018年3月10日 22時) (レス) id: cff83fd718 (このIDを非表示/違反報告)
花藺 - 霧神廉さん» 嗚呼、なんてありがたいお言葉・・・っ!頑張ってきてよかった・・・。これからも頑張ります!o(`^´*) (2018年2月14日 20時) (レス) id: 60a7600913 (このIDを非表示/違反報告)
霧神廉 - 面白いです。更新頑張って下さい! (2018年2月14日 20時) (レス) id: 957f042b23 (このIDを非表示/違反報告)
花藺 - 名無しの猫さん» あああありがとうございますぅぅぅ!これからも更新頑張ります!応援よろしくお願いいたします! (2018年2月12日 13時) (レス) id: 60a7600913 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:花藺 | 作成日時:2018年1月12日 22時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。