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WORRY AND REGRET ページ1

 
 
 
 
〈No side〉
 
東京都内、某所。
とある大手企業の、社長室。

「······社長。
 ············社長!」
「! あ、ああ、すまない」

秘書らしき男性の呼び掛けに反応する霧音ハルトは、
表情に疲れを深く濃く滲ませている。

「社長、やはりお休みになったほうがいいのではありませんか?
 見るからにお疲れですよ?」
「いや、大丈夫だ。次は」
「聞くべきじゃありませんでしたね。休みましょう今日一日」
「しかし······」
「いいですから。では」

ペコリと頭を下げて、秘書は出ていった。
閉じる扉を見つめて、社長である彼は溜め息を吐く。
彼自身、疲れに関しては色濃く感じていたのが事実だ。
重なる心労もあるとは言え未だ三十代前半。
まだまだ働ける、と自分を騙し騙し仕事を続けてきた。
それもそろそろ限界か、と力無く笑みを浮かべ革張りの椅子に背を預ける。
休め休めと周りに言われながらも休まなかったのは、
ただの現実逃避だったのかもしれない。
立つことさえ億劫に感じながら、実子同然だった姪たちの姿を思い出す。
思い浮かぶのは、歳に似合わぬ表情をするようになった姪の姿と、
そんな姉を案じる幼い甥と姪の姿ばかり。
 
 
 
―――いつからだろう。
 
 
 
不意に、そう思った。
 
 
 
―――いつからあの子たちは、大人のように振る舞うようになったのだろう。
 
 
 
はにかみながら笑っていたあの子たちの姿が、随分遠いものに感じる。
いつから。
······いつから苦しんでいたのか。
幸せを思い描いていたのに。
もしあの時。あの時こうしていれば。
すべてはたられば。ifの話でしかない。
姪たちが。自らの姉の子供たちがいなくなってしまったことは、事実なのだ。

―――家出、なのかもしれない。

苦しんだ末の決断かもしれない。
ただひとつ。
あの子たちが望もうと望まなかろうと。

―――あの子たちの無事な姿が見たいのだ。
 
 
 
顔を向けた窓の外には、風が吹き荒んでいた。
 
 
 

Eleventh game〔HIDEOUT〕→



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花藺 - 霧神廉さん» ひ、久々に覗いたらこ、コメントが・・・。本当にごめんなさい。そしてありがとうございます。待っててくださいね!頑張ります! (2018年3月21日 22時) (レス) id: 78c6e1698f (このIDを非表示/違反報告)
霧神廉 - 更新停止は寂しいですが、僕はいつまでも待ってます! (2018年3月10日 22時) (レス) id: cff83fd718 (このIDを非表示/違反報告)
花藺 - 霧神廉さん» 嗚呼、なんてありがたいお言葉・・・っ!頑張ってきてよかった・・・。これからも頑張ります!o(`^´*) (2018年2月14日 20時) (レス) id: 60a7600913 (このIDを非表示/違反報告)
霧神廉 - 面白いです。更新頑張って下さい! (2018年2月14日 20時) (レス) id: 957f042b23 (このIDを非表示/違反報告)
花藺 - 名無しの猫さん» あああありがとうございますぅぅぅ!これからも更新頑張ります!応援よろしくお願いいたします! (2018年2月12日 13時) (レス) id: 60a7600913 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:花藺 | 作成日時:2018年1月12日 22時

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