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京「
一緒に入るのと連れ込まれた浴槽内で、向かい合って座る大我がそんなことをいきなり言い出した。
「異動願いはずっと出してるけど、そればっかりは私にはどうにも…」
京「違うよ。仕事辞めて」
話が飛躍しすぎて思わず大我の顔をマジマジと見つめたけど、冗談を言ってるような顔ではない。
「え、なんで？」
京「遠距離とか嫌。こっち戻ってきて一緒に暮らそ。お前1人養うくらいどうってことない」
「転勤になったって報告した時、応援してくれたじゃん。なのになんで？」
京「それはお前が嬉しそうだったから言い出せなかっただけ。寿退社なら円満に退社出来るだろ」
つまり本当は大我は最初から転勤に反対してたんだ。なら、最初にそう言ってくれればよかったのに。
「嫌だ」
京「なんで？やっぱり浮気してんの？」
「どうしてそうなるの。してないってば」
京「じゃあ、なんで。俺の事嫌いなの」
「大我のことは愛してる。でもそれとこれとは違うの」
突然大我が黙った。どうしたのかと顔を覗き込もうと近寄ったら、パシンっと乾いた音が響いて口の中に鉄の味が広がった。
「ｯ、大我…？」
京「っ！ごめん！！カッとなってつい…でも、俺にはお前しかいないの」
困惑したように自分の手を見つめて、弱々しい声を出す大我を反射で抱きしめた。
「ごめん。私が間違ってたね」
京「A？」
「辞める。仕事辞めて東京に戻るよ」
京「本当？」
パアっと笑顔を咲かせた大我に、この人には私がいなきゃダメなんだって反省をした。
……それが植え付けだとも知らずに。
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作者名：ミヤ | 作成日時：2023年6月17日 15時
