Hokuto ページ26
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北「出来たよ」
キッチンからひょこっと顔を覗かせた北斗は、彼の誕生日にあげたグリーンのエプロンがよく似合っている。着けているのを見たのは初めてだけど、私のセンスに曇りがなかったと安堵した。
「やった、楽しみ！」
北「大したものじゃないけど」
食卓に並べられていくのはどれも家庭料理で、確かに大したものじゃないかもしれないけれど、北斗が作ってくれたということに大きな意味がこめられているのだ。
ひと月ほど前、誕生日は何が欲しい？と直接聞かれて困った私は、彼との時間をねだった。なにもしなくていいから一緒にいてほしいという頼みに彼は、食材が詰められたエコバッグと共に訪ねてきた。
まるで同棲しているかのような状況に心が躍るのも仕方ない話だ。
北「髪くらい乾かしてきなよ」
髪からポタポタと水を零したままの私に、北斗はため息をひとつ零して肩にかけたままのバスタオルを奪った。
「北斗に早く会いたかったんだもん」
北「そんなに焦らなくてもいなくなったりしないよ」
「…本当に？」
北「そんなに疑う？」
「なんか北斗って目離したら消えていなくなっちゃいそう」
北「どういうイメージなんだよ」
話しながら髪の水分を拭ってくれた北斗がバスタオルを椅子にかけた。
「北斗？」
北「いいでしょ？」
なにが、とは言わなかったけどわかったから、静かに頷いた。
「ｯ、好き…、好きだよ」
優しいキスを身体中に落としてくれるのが嬉しくて、お返しのつもりで言葉を返す。北斗が滅多に言葉はくれないけどその分行動で示してくれる。
北「あ」
「？」
北「おめでとう」
「…んｯ、ありがと」
日付が変わったんだろう。北斗がお祝いの言葉をくれて、お預けされていた唇にキスをしてくれた。
北「今年も俺の隣にいてね」
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作者名：ミヤ | 作成日時：2023年6月17日 15時
