名前のない関係─CM (ページ32)

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お皿洗いが終わって帰り道

「いいのに」

「だから」

「はいはい」

また歩いて駅まで送ってくれるチャンミン。
多分、タカシの過去のことも気になってるんだと思う。

「タカシね、両親が離婚してて・・」

私は静かに話し始める。
チャンミンは黙って前を向いて聞いていた。

タカシの両親は物心ついた時から仲が悪かった。
とうとう離婚して母親に引き取られたが再婚するときに父の元へ行くことになった。
父から聞かされる母の悪口はうんざりだったらしい。
そしてある日父は家からいなくなった。
両親から捨てられたタカシは祖父母に育てられたらしい。

「ざっくりと言うとこんな感じかな・・」

「そうだったんですね・・」

「おじいさんとおばあさんがね、いい人たちだったらしいんだけど
　やっぱりどこか壁を作っちゃってたみたいで。いつも笑ってなきゃいけない気がしてたって」

「そっか・・だからかな・・初めて会ったときからなんか似たような感じがしたの」

ちょっとうつむいて言うチャンミンは自分を笑うように小さく口元をあげた。

「スーパースターですから、笑顔で居なきゃいけないじゃないですかー」

おどけた口調で言う。
本心を見られないように。
そっか、タカシと似てる。

「そんなアイドルっぽいとこありましたっけ？毒舌吐きまくりのくせに」

「お？バレたと思って開き直ってやがりますか！？」

「うるさい」

「それがファンの言う事か！」

「あーあーあー聞こえなーい」

「生意気な！」

「チャンミンだって年下のくせに生意気ぃー！」

「その年下にキャーって言ってんでしょ」

「「・・・」」

お互いに黙ってしまった。
言ってる、言ってるけど・・

「ダメだ、全然想像がつきません」

「私も今自分の事なのに想像つかなかった・・」

「キャーって」

「してるよね、しててもね・・」

「やめましょう、やっぱりヌナはヌナだ」

何故だか両肩を抱きしめブルブルしている失礼なチャンミンに

「チャンミンかわいー！」

わざと黄色い声を出してみた。

「カッコいいだって言ってる」

「かっこいーチャンミーン」

「バカにしてる」

「してないよ、ファンだもん」

「なんで俺が・・」

ぶつくさ言ってるチャンミンにアハハ、と笑った。