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ざあ、と、強い風が吹く。
そばに立つもみじの木の枝が揺れ、紅葉した葉が散り、舞った。
ふわふわと風に乗り舞い降りる赤く染まった葉の行き先を追っていると、
「風、つよ。大丈夫?」
中村先輩は強風に少し身動いだ私を案じてくれる。でもそんなことより、
「あ、」
私の視線は釘付けだった。
中村先輩の少し伸びた前髪に、きれいな髪飾りのようにそっと着地した紅いもみじの葉。
すごく綺麗で、見惚れた。
「ん?なんか、ついてる?」
私の視線で気づいたのか、髪を触ろうとするから、咄嗟にその手を捕まえてしまう。
「だめです!」
中村先輩は驚いて、私を見た。
そりゃ、驚くよね。自分でも何をしているんだろうと、後で反省するだろうな。
「だめ...とは?」
「いえ、葉っぱが。....もみじが、可愛くとまってるんです」
「ふはは。俺に?Aって、変わってんね」
目尻を下げ笑った中村先輩は少し幼く見える。
「でも、このままって訳にはいかんでしょ」
写メでも撮る?と、私を揶揄う。
中村先輩はなるべく最小限の身動きでポケットから自分のスマホを取り出して、私に渡した。撮ってよ、と言うから、カシャ、と1枚その姿を写真におさめる。
「取って、葉っぱ」
「はい」
彼の前髪に触れようとする指先が、少し緊張している。私、今日のことを一生忘れないかもしれない。何故だかわからないけれど。
「とれ、ました」
「ほんとだ、綺麗なもみじだね。俺、けっこう動物とか植物にモテんだよね」
「え.....?植物にも?」
「んはっ。冗談」
つられて笑う。人間にもモテてますよ先輩、とは言わないでおく。
さっきまで髪飾りだったもみじを、はいあげる、と言って私に渡す。指先が一瞬だけ触れ合って、なんだか熱い。
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ヨーコ(プロフ) - ドキドキ止まりません!最高です!更新楽しみにしています♪ (2020年4月4日 20時) (レス) id: b9e84898e5 (このIDを非表示/違反報告)
その(プロフ) - ゆんさん» ありがとうございます〜!楽しみにしていただけて嬉しいです。そろそろ終わりに向けて、と思ってますが、もう少しお付き合いくださいませ♪( ´▽`) (2020年2月6日 21時) (レス) id: 55b0c33bda (このIDを非表示/違反報告)
その(プロフ) - ショウさん» いつもありがとうございます〜!寒いの苦手なのは倫也さんのリアルを意識してみました( ´ ▽ ` )もうしばらくお付き合いくださいませ! (2020年2月6日 21時) (レス) id: 55b0c33bda (このIDを非表示/違反報告)
ゆん - 更新とても嬉しいです!題名が2匹と書かれていたのでドキドキしながら読みました!そのさんの作品を見るのが今の私の楽しみです!少女漫画のようにきゅんきゅん毎回させてもらえて幸せな気持ちになります!これからも応援しています! (2020年2月6日 15時) (レス) id: 57aaad4ad9 (このIDを非表示/違反報告)
ショウ(プロフ) - 感想遅くなりましたが、らいおんの告白とても胸に響きましたっ!2匹のやり取りの続きもとても楽しみに待ってます、おおかみが寒がりなところ保温ポット愛用されてるのでピッタリですね 笑 (2020年2月5日 15時) (レス) id: bd7e526c97 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:その | 作成日時:2019年12月10日 12時