ページ ページ39
近寄って、仰向けに寝そべる彼の顔を覗き込んだ。すると、気配に気付いたのか顔を覆った腕をのけて、菅田に影を作って見下す私と、見上げる菅田。ああ、また2人だけの世界だ。
菅田の右手がゆっくりと動き、垂れた私の髪を耳にかける。
「あいつならやるやろーなと思ったけど」
「、?」
「キスマーク」
朝、隠すようにファンデーションも塗ってきたのに、気付かれたのが恥ずかしくて咄嗟に首元のその部分を手で貸す。
「見せちゅーしてくるくらいやし」
「みせ、ちゅー?」
「いや、こっちの話」
起き上がった菅田は、後ろ手をついて、黒い艶々とした黒髪の前髪を、雑に梳かした。
「ねえ、菅田」
「んー?」
「私はもう、倫也先輩の、ものだよ。だから、こんな風にこっそり会ったり、そういうのは、もうできない」
深呼吸をして、伝える。
予想外にも、はぐらかすことなく、うん、と菅田は素直に頷いた。そして、私のことを見据え、「ええか、一言一句聞き逃すなや?」「俺の告白」と前置いて、その美しい瞳が、ゆっくりと瞬きする。
「いつかお前が困ったとき、ピンチのとき、俺がなんとしてでも助けてやるって思うくらいには」
「お前のことが好きやで」
「今、俺たちがどうこうなることが重要やと、思わへんくらい」
「俺らは、絶対いつか、繋がる。きっと、どこかで」
「お前も絶対、そう思てるはず」
「でも今は、オオカミに、やる」
最初から最後まで、射抜くような視線を私に送って、そう伝えた。
私は唇を噛むだけで、何も言えなくて。
ただ、心の奥底が震えるのを感じていた。
おわり
231人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ヨーコ(プロフ) - ドキドキ止まりません!最高です!更新楽しみにしています♪ (2020年4月4日 20時) (レス) id: b9e84898e5 (このIDを非表示/違反報告)
その(プロフ) - ゆんさん» ありがとうございます〜!楽しみにしていただけて嬉しいです。そろそろ終わりに向けて、と思ってますが、もう少しお付き合いくださいませ♪( ´▽`) (2020年2月6日 21時) (レス) id: 55b0c33bda (このIDを非表示/違反報告)
その(プロフ) - ショウさん» いつもありがとうございます〜!寒いの苦手なのは倫也さんのリアルを意識してみました( ´ ▽ ` )もうしばらくお付き合いくださいませ! (2020年2月6日 21時) (レス) id: 55b0c33bda (このIDを非表示/違反報告)
ゆん - 更新とても嬉しいです!題名が2匹と書かれていたのでドキドキしながら読みました!そのさんの作品を見るのが今の私の楽しみです!少女漫画のようにきゅんきゅん毎回させてもらえて幸せな気持ちになります!これからも応援しています! (2020年2月6日 15時) (レス) id: 57aaad4ad9 (このIDを非表示/違反報告)
ショウ(プロフ) - 感想遅くなりましたが、らいおんの告白とても胸に響きましたっ!2匹のやり取りの続きもとても楽しみに待ってます、おおかみが寒がりなところ保温ポット愛用されてるのでピッタリですね 笑 (2020年2月5日 15時) (レス) id: bd7e526c97 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:その | 作成日時:2019年12月10日 12時