II ページ24
知らない駅
自転車の後ろ
きらきら光る、海
サンダルを放って迷うことなく海に入ってく
揺れていたライオンのたてがみが、濡れて、ふるふると頭を振った
楽しそうに、笑いながら
「お前も道連れや!」
叫ぶから、逃げたけど捕まって、海に放り込まれて、呆然としてる私をあっはっは!と笑いながら見下げてる姿が腹立たしくて、腕を引っ張って今度は私が彼を引き摺り込んだ。
制服が、体に張り付いて、気持ち悪いはずなのに気分はいい。砂の感触。冷たい海水。潮風のにおい。
お互いずぶ濡れになってんのを眺めて、声をあげて笑う。
「むちゃくちゃやなー、もー」
「ほんと、どーしよう」
「ブラ透けてめちゃくちゃエ ロいけど」
「.....っ!」
「狼に噛み殺されるんちゃう、俺。これバレたら」
はっはっは、と大して気にもしてないように言って笑う。
海水を掬ってパシャパシャとかけてくるから、私も負けじと応戦して、負けへんでー!なんて立ち上がって煽ってくるのに、どうやったら勝ちなの?!って聞き返して笑う。
立ち上がろうとして、足がもつれて、転んで。
「ふはは、大丈夫か?」
「ん、」
転けて四つん這いの状態の私に手を差し伸べるから、その手のひらを掴む。引き上げようとしてくれるのを逆に引っ張ると、うわって叫びながらまた海に沈んだ。楽しい。
夏の日差しが、私たちを照らして、空の青を反射した青い海は、どこまでも広い。
「私の勝ち!」
「なんやねん、ズルない?いまの!俺の優しさ踏みにじるやん」
濡れた髪の毛をかき上げて、私を恨めしそうに見つめて、いつの間にか私たちの距離はトモダチと呼ぶ距離とは言えないほど、近づいていた。
菅田の顔が目の前に、指先が海水の中で触れている。
「いまが、」
「キス、」
「の、」
「ちゃーんす」
ゆっくりと菅田の端正な顔が近づいてくるのがわかった。だめだ、それは、
「せえへんよ」
唇に触れたのは、菅田の濡れた指だった。
ふに、と、優しく。
「できひん」
また寂しそうな顔をする。
どうしてだろう、どうしてそんな顔をするんだろう。
強引で凶暴なようで、ほんとうは優しいライオン。
「血ぃ、出てるやん」
さっき転んだ時擦りむいたのか、私の膝小僧は擦り傷で血が滲んでいた。
「ン、」
菅田はあろうことか、ぺろ、とそこを舐めて、
「シオと鉄の味、」
言って私を見るから、キスよりいけない事をしたような気がして目を伏せた。
「帰ろ」
「それ、消毒せな」
ざざ、と波が寄せて、返す。
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ヨーコ(プロフ) - ドキドキ止まりません!最高です!更新楽しみにしています♪ (2020年4月4日 20時) (レス) id: b9e84898e5 (このIDを非表示/違反報告)
その(プロフ) - ゆんさん» ありがとうございます〜!楽しみにしていただけて嬉しいです。そろそろ終わりに向けて、と思ってますが、もう少しお付き合いくださいませ♪( ´▽`) (2020年2月6日 21時) (レス) id: 55b0c33bda (このIDを非表示/違反報告)
その(プロフ) - ショウさん» いつもありがとうございます〜!寒いの苦手なのは倫也さんのリアルを意識してみました( ´ ▽ ` )もうしばらくお付き合いくださいませ! (2020年2月6日 21時) (レス) id: 55b0c33bda (このIDを非表示/違反報告)
ゆん - 更新とても嬉しいです!題名が2匹と書かれていたのでドキドキしながら読みました!そのさんの作品を見るのが今の私の楽しみです!少女漫画のようにきゅんきゅん毎回させてもらえて幸せな気持ちになります!これからも応援しています! (2020年2月6日 15時) (レス) id: 57aaad4ad9 (このIDを非表示/違反報告)
ショウ(プロフ) - 感想遅くなりましたが、らいおんの告白とても胸に響きましたっ!2匹のやり取りの続きもとても楽しみに待ってます、おおかみが寒がりなところ保温ポット愛用されてるのでピッタリですね 笑 (2020年2月5日 15時) (レス) id: bd7e526c97 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:その | 作成日時:2019年12月10日 12時