ページ ページ16
「おばちゃーん、B定１つ、大盛りで！あーあと、あれ、こっそりちょーだい」
トイレに行くはずの私は、菅田が食券を渡す傍ら立ち尽くし、お盆を受け取る彼に促されるまま、学食の端の端、彼女たちからは見えない場所まで連れられる。
B定の乗ったお盆を机におき、どかっと椅子に座った菅田と、ずうんとした空気を纏って、その横の柱の影にうずくまる私。
「いやあ、女子こわっ」
「お前嫌われてんの？」
「なんで？可愛くて乳でかいから？」
「だっさー」
言って、げらげらと笑う。
なんだろう、笑ってくれた方がマシだな。
憐まれるよりかは断然。
口の中は血の味がする。呼吸、しないと。
「いけるか？」
横目でこちらを見て、片眉をあげて、問うてくる。標準語で「大丈夫？」というニュアンスのようだ、最近覚えた。
「いけ、る」
「ぶはっ。いけへんやつやん、それ」
「ていうか私は、可愛くて乳がでかいという認識なの？菅田にとって」
「せやで。そして女子にいじめられて愛想笑いで乗り切ることもできず顔面蒼白になってる不器用な処女。処女やから乳の持ち腐れやなー、うははは」
「........、もうなんて返していいのか.....」
わからないから膝を抱え込んでる腕に半分顔を埋めてはあ、と溜息。褒められているのか、貶されてるのか、菅田に言われるとそれすら明確じゃない。
菅田は手を合わせていただきます、ときちんと言って、お箸を綺麗に持ち食事をとりはじめる。
「普段から、あんなん？」
「.....いつもじゃないよ、でも、たまに、あるかな」
ピストルで集中射撃。
中村先輩と、付き合い始めた頃からな気もする。何かを得て、何かを失ったのかな、わからない。
「泣くなや、そんなんで」
ふと、涙が溢れそうになるのを堪えていると、菅田が言う。
「あんな、しょーもない。気にすんな。お前はそれでええねん」
目線は合わせず、でもしっかりと私に届くように伝えてくれる。ぐっと涙を堪えた。倫也先輩だったら、思いっきり泣きなって、甘やかしてくれるだろう。甘やかさない菅田のことが、私は"トモダチ"として、好きだと思った。
「ていうか、元はと言えば菅田が来たからあんな流れになったんだけど？」
「せやねん。それはごもっとも」
もぐもぐと咀嚼してごくん、飲み込んで悪びれずそう言った。まさかあんなことなる思わへんやん？て。ちょっと申し訳なさそう。
スッと気持ちが抜けていく。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 231人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ヨーコ(プロフ) - ドキドキ止まりません！最高です！更新楽しみにしています♪ (2020年4月4日 20時) (
レス) id: b9e84898e5 (このIDを非表示/違反報告)
その(プロフ) - ゆんさん» ありがとうございます〜！楽しみにしていただけて嬉しいです。そろそろ終わりに向けて、と思ってますが、もう少しお付き合いくださいませ♪( ´▽｀) (2020年2月6日 21時) (レス) id: 55b0c33bda (このIDを非表示/違反報告)
その(プロフ) - ショウさん» いつもありがとうございます〜！寒いの苦手なのは倫也さんのリアルを意識してみました( ´ ▽ ` )もうしばらくお付き合いくださいませ！ (2020年2月6日 21時) (レス) id: 55b0c33bda (このIDを非表示/違反報告)
ゆん - 更新とても嬉しいです！題名が２匹と書かれていたのでドキドキしながら読みました！そのさんの作品を見るのが今の私の楽しみです！少女漫画のようにきゅんきゅん毎回させてもらえて幸せな気持ちになります！これからも応援しています！ (2020年2月6日 15時) (レス) id: 57aaad4ad9 (このIDを非表示/違反報告)
ショウ(プロフ) - 感想遅くなりましたが、らいおんの告白とても胸に響きましたっ！2匹のやり取りの続きもとても楽しみに待ってます、おおかみが寒がりなところ保温ポット愛用されてるのでピッタリですね 笑 (2020年2月5日 15時) (レス) id: bd7e526c97 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：その | 作成日時：2019年12月10日 12時
