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少し考えて、菅田が口を開いた。
「好き...........、やけど、手ぇ出せへんなと、」
「思ってる」
私をまっすぐ見る目を逸らせない。
ああ、どうしてそんな言葉をいま、言うの。


「ふざけんなよ」
倫也先輩の声が低くてハッとして我にかえる。ガタッと乱暴に椅子を揺らして立ち上がった彼は、私の手を取って、行こう、と一言。




店を出て、無言で倫也先輩は傘を開いた。ふう、とゆっくり息を吐く姿は、心を落ち着かせているようにもみえる。
ばたばたと音を立てて降る雨が、私たちの足元を濡らす。

「.........、ごめん。取り乱しました」
眉を下げて笑う。いつもの倫也先輩に戻っていて安心した。

「いえ、あそこに座ったのが間違いでした。ごめんなさい」
「いーの、それは。俺があのままでいいって、言ったんだし思ったんだから」

優しくそう言う。
「あいつのこと、気になる?」
聞くから、首を横に振った。
───気にならない。


倫也先輩は首を捻り、一瞬店内を伺うと、

「こっちに来て」
言って、傘の中に私を入れて手をひく。

路面に沿って全体がガラス張りの店の前。私たちが座っていた席からも、この場所はきっと見えている。

「目、瞑って」
「え?」
「瞑って」

有無を言わさない言い方だった。
店の軒下、私の右側はガラス張りの店内が見え、左側は歩道で行き交う人たち。正面には倫也先輩。じいっと、私を見つめている。

空色の傘で、歩道側を隠した。
目を閉じる。
右肩に手が置かれ、ほどなく、口付け。
されるんだろうと、思ったけれど。
どうして今ここなのかとか。

わからないでいたい。

深くなる一歩前の口付けは、倫也先輩の飲んでいた炭酸の味。
ゆっくりと離れる唇。

倫也先輩は、ちら、と店内を見た。
私は、視線を落としたままで、頬が熱い。
再び手を引かれ、相合傘で歩き出した。





「わー!キスした!あのふたり!さっき隣にいた人たちだね!」
「..........、性格、わるっ」

菅田が溢した言葉を、私は知る術がない。









おわり

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設定タグ:菅田将暉 , 中村倫也 , 高校生   
作品ジャンル:タレント
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ヨーコ(プロフ) - ドキドキ止まりません!最高です!更新楽しみにしています♪ (2020年4月4日 20時) (レス) id: b9e84898e5 (このIDを非表示/違反報告)
その(プロフ) - ゆんさん» ありがとうございます〜!楽しみにしていただけて嬉しいです。そろそろ終わりに向けて、と思ってますが、もう少しお付き合いくださいませ♪( ´▽`) (2020年2月6日 21時) (レス) id: 55b0c33bda (このIDを非表示/違反報告)
その(プロフ) - ショウさん» いつもありがとうございます〜!寒いの苦手なのは倫也さんのリアルを意識してみました( ´ ▽ ` )もうしばらくお付き合いくださいませ! (2020年2月6日 21時) (レス) id: 55b0c33bda (このIDを非表示/違反報告)
ゆん - 更新とても嬉しいです!題名が2匹と書かれていたのでドキドキしながら読みました!そのさんの作品を見るのが今の私の楽しみです!少女漫画のようにきゅんきゅん毎回させてもらえて幸せな気持ちになります!これからも応援しています! (2020年2月6日 15時) (レス) id: 57aaad4ad9 (このIDを非表示/違反報告)
ショウ(プロフ) - 感想遅くなりましたが、らいおんの告白とても胸に響きましたっ!2匹のやり取りの続きもとても楽しみに待ってます、おおかみが寒がりなところ保温ポット愛用されてるのでピッタリですね 笑 (2020年2月5日 15時) (レス) id: bd7e526c97 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:その | 作成日時:2019年12月10日 12時

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