春をみつける (ページ6)

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「やーハナ！遅かったね」

やっとありつけた今日の日替わりを手に、周囲を見渡していた俺をヒョンジンが手を振りながら呼び止める。

「どっかの誰かさんが手伝ってくれなかったからね！」なんて嫌味を言いながら隣に腰掛けると「なに、迷ったの？」とヒョンジンが問うた。

「……そういうわけじゃないけど、」

返しながら、瀬尾さんのことが思い出されてなんとなく口籠る。

そんな俺を知ってか知らずか、「第一図書室まで行ったんだって？」「どこにあるの？それ」と向かいの席に座っていたスンミンとリクスが代わる代わる言った。

「…やー、ヒョンジナ、もう話したのかよ」

「当たり前でしょ。こんなおもしろいこと話さないわけないじゃん」

トンカツを口に運びかけていた手を止めて非難の目を向けるも、ヒョンジンは1ミリも悪びれた様子を見せない。

「寝てたんだから自業自得だね」

「チェ先生の授業でしょ？勇気あるよね」

「…お疲れさま、とかないわけ？」

「あは！かわいそうなハニ〜〜」

ぐさぐさと刺さり続ける正論。
尚も俺を煽り続けるヒョンジンに掴みかかろうとしていると「そう言えばハニ、Aに会った？」とスンミナが問うた。

「え、…なんで？」

「会ったんだね」

「誰？」

「瀬尾A。第一図書室って言うから、もしかしてと思って」

「まって、…スンミナ、瀬尾さんのこと知ってんの？」

「知ってるも何も。同じクラスだよ」

「ああ！音楽の授業でスンミニと同じグループの子か！ギターの」

「そうそう」

「まって、もしかして知らないの俺だけ？？」

どうやらリクスも瀬尾さんのことを知っているようで、たった1人何も知らないヒョンジンだけが説明を乞うように俺たちを見渡す。

「スンミニのクラスの日本人の子だよ」と答えたリクスに「図書委員なんだよ。当番で第一図書室に行くこともあるって言ってたな〜と思って」とスンミンが付け足した。

「へ〜そうなんだ。日本人の子がうちの学年にいるの、知らなかったな」

「…俺も」

「A自身、目立つタイプじゃないしね。一年の頃は韓国語にも今ほど慣れてなくて、今よりもっと口数も少なかったって言ってたよ」

「たしかに。大人しそうな子だよね。スンミニとは結構仲良さそうに見えるけど」

「まぁ、選択同じグループだし。普通に仲良いとは思うよ」

そんな風に瀬尾さんを語るスンミンを見て、ヨンボギの言う通り2人は本当に仲がいいんだろうなと頭の隅の方で考えた。