＿＿83 ページ43
そのままどれぐらい過ぎただろうか。
騒々しいバンドはもうとっくに演奏を終えていて、次のアーティストが続々と画面を占領していく。
それでもあたしがテレビの方に視線を移さないのは、
下げた頭が、肩が、震えているから。
5年前…母親もこんな風に静かに泣いていた。
何週間経っても、何ヶ月経っても
暗い部屋に1人ぼっちで。
あの時は見て見ぬふりをした。
小さい自分には何も出来ないと思い込んで、そっと扉を閉めていた。
でも今は違う。
彼は、あたしの目の前で泣いているのだ。
｢流星｣
泣いたあたしを小瀧は抱きしめてくれた。
泣いてもなかった時も、抱きしめてくれた。
次はあたしの番。
ゆっくり優しく呼んだ名前に藤井は反応した。
顔を上げたその隙にひょいと体に腕を回す。
｢なんにも考えてなかったの。2人があたしを傷つけないようにしてるとか、流星がすごく重い覚悟を持って実行したとか｣
｢家族の中であたししか仇取れないなって思って、ひたすら氷室に後悔させることしか考えてなかった｣
無言で頭がこくんと動いた。
｢でも多分、心のどっかで怖かったよ。もし実際に見たら…きっと歯止めきくわけなかったから｣
なぜころしたんだと。
あたしはそう彼に怒鳴りつけた。
冷静に考えればあたしだってそうなる可能性があったのだ。
あいつと、あいつなんかと同じ犯罪者になってたかもしれなかった。
世間は流星が決断した結果を間違いだというだろう。
あたしもそう思っていた。
きっと、本人でさえもそう思っていた。
違う。
本当に彼にかけるべき言葉は…
｢ありがとう。兄を、慕ってくれて｣
もう苦しみから解放されてほしい。
彼は…彼らは、本当によく、耐えてくれた。
微かに聞こえるすすり泣きをかき消すかのように、
聴いたことのあるメロディーがテレビから流れ出す。
終わらない夜はないと、知ったライオン。
闇を喰らえばあとは、オアシスを探すだけ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 365人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ジャニーズWEST」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
カジャ(プロフ) - ももせ/さん» 初めまして、とても嬉しい言葉ばかりで感激です。重めの話ばかりで恐縮ですが、そう言って頂けると書いてきて良かったなと思います。こんな話でよければどうぞお楽しみください (2021年12月18日 22時) (
レス) id: c91b141c55 (このIDを非表示/違反報告)
ももせ/(プロフ) - はじめまして。いつも楽しく作品を拝見させていただいております。過去作品もどれもとても好きなのですが今作品はまた少し違った雰囲気でとても面白く読んでおります。毎日少しずつでも更新されるのが本当に楽しみです。どうかご無理のない範囲で、引き続き応援してます (2021年12月17日 2時) (レス) @page12 id: 13d7ddc5f9 (このIDを非表示/違反報告)
カジャ(プロフ) - りりぱんださん» 前作に続きコメントありがとうございます。直接言葉を頂けるのが何よりの励みです、お楽しみいただければ幸いです (2021年12月16日 17時) (レス) id: c91b141c55 (このIDを非表示/違反報告)
りりぱんだ(プロフ) - 更新いつも楽しみにしてます！無理せず作者様のペースで更新してください！楽しみに読み続けます◎ (2021年12月10日 0時) (レス) @page5 id: e017cd0bab (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：カジャ
| 作成日時：2021年12月8日 17時
