39-愛情表現 ページ41
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「――…Aからは、もう十分貰ったよ。
だから俺が返したいんだ、駄目か?」
「記憶にない事をそんな言われても……」
「はは、そっか。俺はAが側に居てくれるだけでもう何もいらねえんだ」
「私なんかふさわしくな、」
「A」
そんな事、言うなって言っただろ。
訴えた瞳を見てAは気まずそうに口を噤んだ。
「お前が俺の全てだしAは完璧だ。
逆に何で相応しくないとか思うんだよ?」
「……だって、そもそも身分が違うし、頭も良くて人気者で、意識高いし…それこそ、完璧だし」
「ふは、本気でそう思ってんのか?」
瞳を潤ませながら上目遣いで俺を見上げるAが堪らなく可愛い。
だけど俺は残念ながらそんなでかい人間じゃねえし、完璧じゃねえよ。
「さっき見ただろ、俺の情けねえ所。どんだけ見てくれ良かろうが、結局は大切な宝物を失ってガキみたいに泣き縋る男だ。あん時の俺はAが思うような完璧な人気者じゃねえけど、Aは嫌いになった?」
「っ嫌いになんか、なるわけ ない…。
玲王を抱きしめてあげたいって思った、愛しくて」
「……、俺も同じ気持ちだぞ、A」
お前の前じゃ、俺は器用大富豪でも、一流でも、御曹司でもねえ。
不器用で、三流で、お前に縋りつくみっともない男に成り下がる。
「本当はずっと格好いい所を見せてえけど、Aが小さい事で悩んでんなら、いくらでも安心させてやるから」
「……うん、見せて。本当はずっと玲王の完璧じゃない所が見たかった」
ソファに座っていた彼女に腕を引かれ、俺を隣に座らせる。
頬に当てられた手はどこまでも暖かい。
「そう、私達大人になったんだよ。だからこれまでの繰り返しはしたくないの。
玲王の事今も変わらず大好きよ。でも昔と違って、私にも貴方を支えさせて欲しい」
「それが、Aの答えか?」
「うん。私が玲王から離れた原因も、今まで玲王に向き合えなかった理由も、これが答えだった」
「……そっか。残念、俺はずっと頼っててほしいんだけどな」
「信頼してるよ。だからこそ、玲王も私に頼って欲しい。玲王が私に尽くしてくれるのが愛情表現なら、玲王の弱い部分を支えたいのが私の愛情」
そんな事言ったら、俺もっとお前に尽くしたくなるけど?
思わず飛び出しかけた言葉をぐっと呑んで、俺は我慢できず笑ってしまった。
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おそらまめ(プロフ) - 砂時計さん» 砂時計様。よくわかってらっしゃる…。完璧な男が好きな女性を囲う為に色んな手を使って縋りつく姿をどうしても書きたくて(笑)夢主はきっと彼の思惑なんて一生気づかないまま捕まってるんです。それがいい。 (2023年5月6日 11時) (レス) id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
砂時計(プロフ) - コメント失礼致します。我慢できず…言葉を綴らせてください。 甘やかして、それでも駄目なら、と縋り着く執着御曹司が素晴らしすぎてしんどいです。夢主ちゃんもがっつり捕まってて、玲王の策略なのかなと妄想すると更にエモい。これからも応援しております😭♡ (2023年5月4日 11時) (レス) id: 9f48da2d13 (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - ぺイさん» ペイ様、コメントありがとうございます!楽しんで頂けてるようで嬉しいです。沢山食べて味わってくださいね!次の更新をお待ちください。 (2023年5月3日 23時) (レス) id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
ぺイ - う、うあ〜!おいしすぎぃー!本当にありがとうござますっ!これからも追います! (2023年5月2日 18時) (レス) @page40 id: 470dc29d1f (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - おにぎりさん» おにぎり様、コメントありがとうございます。ちゃんと重重な様子を描けてるか不安でしたがそう言って頂けて安心しました、こちらこそ大変光栄です。応援ありがとうございます、次の更新をお楽しみにお待ちください。 (2023年4月15日 19時) (レス) id: bb8d3426f9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おそらまめ | 作成日時:2023年4月6日 19時