好きとお金は別物で【御影玲王】

38-狂わせる方法 ページ40

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彼女の隣で同じく水浸しになる紙切れを摘まみ上げる。
「あ」と声を上げた彼女を紙越しに感じながらそれに目を通す。





「宣誓書……」





『私は玲王さまに付きまとうのをやめて菅原主任と幸せになることを誓います』…。
丸文字の手書きで書かれた胸糞悪い宣誓書まがいのもの。


氏名の欄には、"綾"まで書かれた細く整った字が書かれていた。





「そんなの、何の効力もないのにね。
　でも、書けなかったの」

「…何で」

「嘘でも 御影くんを諦めるなんて私には言えないや」





次の瞬間には彼女は俺の腕の中に居た。
冷たくなった体と濡れた服が俺の体温で解けていく。





「み、御影くん…！？ え、あの…！
　濡れちゃうよ！」

「いい。綾瀬さんが…Aが風邪引かねえように」

「っ今、名前」

「教室戻れるか？ 俺のジャージ貸すから」





戸惑ったように抵抗する彼女の手を引いて、本鈴と同時に自分の教室に着いた。
俺のクラスは体育だから教室には誰も居ない。

冷たそうにブレザーを脱いでいたAの肩に俺のジャージをかける。





「……こんな事されたら期待しちゃうよ」

「期待しろよ。これからもうAにしかしないから」

「………っやっぱり、好きです。御影くんの事が。
　優しくて友達思いで…だけどこれからは、私にだけ 優しくしてほしい…」





言葉を詰まらせながら俯きがちに言うAの耳は真赤になっている。
今すぐにでももう一度抱き寄せたい。

２度目の告白の返事は、もうずっと前から決まっていた。









「――…最近はどうだ？ いじめられてねぇか？」

「うん。そういえば全然来ないな、特進の人たち。
　まあ玲王以外いらないから、いいや」

「そっか。良かった」





お前は何も知らなくていいんだよ。
お前が俺に依存するように外堀を埋めている事も、お前を虐めた奴を退学させた事も。


ただ俺の隣で、何もできず俺に甘えていればいい。
Aの人生に、俺を巣食わせていればいい。







――……ブルーロックから戻った後Aに別の恋人がいると聞いた時は、一か月はまともな生活を送れなかった。
俺の事を裏切って見捨てたアイツに復讐したかった。
大学から就職まで全部知り尽くして、計算通りに再会した４月。



お前の顔を見た瞬間、俺の中で復讐なんて言葉は死んだ。
もう一度お前を愛したいって、やっぱり俺の隣はお前しかないんだって 心からそう思ったんだ。





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