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32-呼吸の温度 ページ34

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上司からの頼みだし断るに断り切れなくて、適当な服に着替えて指定されたお店の近くまで迎えに来てしまった。

駅から走って向かえば、店の前のベンチで背中を丸くしてだるんと座り込む玲王と、紙袋や玲王の分の荷物まで持った國神チーフが立っていた。





「チーフ!」

「おう、姫。来てくれて助かった」

「出張帰りなのに、大変でしたね」

「大変なのはお前だろ。迷惑かけてごめんな」





チーフから彼の荷物を受け取って、ジャケットも一緒に貰う。
片手が空いたチーフは携帯を取り出してタクシー会社に連絡してくれているみたいだった。





「タクシー用意したから、これで乗ってくれ。足りない分はまた」

「え、そんな…いいんですか?」

「ああ。経費で落ちるから」

「なるほど。お疲れさまでした」

「お疲れ、気つけてな」





チーフからもお酒の匂いはしたが、ネクタイをきっちり締めたまましゃんと背を伸ばして駅に向かって行った。
握らされた紙幣を大事に財布の中に入れて、一言も喋らない玲王の前にしゃがみ込む。


覗き込んだ顔を見て、息を呑んだ。
2週間前より随分顔色も悪くて、痩せていたから。





「御影くん、立てる? タクシー来たから家まで送るね」

「………ごめん…」





久しぶりに聞いた彼の声は私が慣れ親しんでいた溌溂とした平素のものより数段細く切なかった。

ふらふらと俯いたまま立ち上がる彼を先に中に押し込み、私も後で乗り込む。



タクシー運転手に「白金高輪まで」と伝えて、車中を一切窓の外を眺めながら過ごした。
その間、弱弱しく私の肩に額を預ける彼はものも言わず、時々苦しそうに咳払いをするだけで。





「御影くん、ドア開けてくれる?」

「…ん……」





パスワードと、指紋認証で開くエントランスのスライドドア。
目の前の噴水の水場で危うく戻すんじゃないかと心配していたけど、先程よりも些か確立した足取りで、彼は危なげなくエレベーターに乗り込んでくれた。



今まで彼が酔っぱらった所なんて見た事なかった。
どれくらい飲んだんだろう。
ふんわり香るアルコールから、相当飲んだことが窺える。





「御影くん、着いたよ」

「……」

「私帰るよ。ここで寝ちゃ風邪引くよ」

「………」

「御影くん、ちょっと…」





玄関になだれ込むように入ってすぐ彼は玄関口に崩れる様に座り込んだ。
反応しない彼の隣に荷物を置いてその顔を覗き込む。


__瞬間、俯いた彼が私の手首を掴んだ。





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33-手の甲の結晶→←31-泥酔



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おそらまめ(プロフ) - 砂時計さん» 砂時計様。よくわかってらっしゃる…。完璧な男が好きな女性を囲う為に色んな手を使って縋りつく姿をどうしても書きたくて(笑)夢主はきっと彼の思惑なんて一生気づかないまま捕まってるんです。それがいい。 (2023年5月6日 11時) (レス) id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
砂時計(プロフ) - コメント失礼致します。我慢できず…言葉を綴らせてください。 甘やかして、それでも駄目なら、と縋り着く執着御曹司が素晴らしすぎてしんどいです。夢主ちゃんもがっつり捕まってて、玲王の策略なのかなと妄想すると更にエモい。これからも応援しております😭♡ (2023年5月4日 11時) (レス) id: 9f48da2d13 (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - ぺイさん» ペイ様、コメントありがとうございます!楽しんで頂けてるようで嬉しいです。沢山食べて味わってくださいね!次の更新をお待ちください。 (2023年5月3日 23時) (レス) id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
ぺイ - う、うあ〜!おいしすぎぃー!本当にありがとうござますっ!これからも追います! (2023年5月2日 18時) (レス) @page40 id: 470dc29d1f (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - おにぎりさん» おにぎり様、コメントありがとうございます。ちゃんと重重な様子を描けてるか不安でしたがそう言って頂けて安心しました、こちらこそ大変光栄です。応援ありがとうございます、次の更新をお楽しみにお待ちください。 (2023年4月15日 19時) (レス) id: bb8d3426f9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:おそらまめ | 作成日時:2023年4月6日 19時

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