好きとお金は別物で【御影玲王】

31-泥酔 ページ33

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それから、２週間。
体調を崩した次の日に 玲王は出張が決まった。


顔を合わせる頻度が元々減っていたのに加えて、ここ１週間は毎日彼のデスクが空っぽで。
次第に彼のいない生活に慣れ始めている自分がいる。





「國神チーフも奥さんいるのに出張なんて悲しいよね」

「そーいや、帰ってくるの今日じゃね？ ほら」

「本当だ」





外資系の取引先と契約を結ぶために、取引の製品と共に國神チーフ そして海外事業に明るい玲王が抜擢された。


部署のホワイトボードには１８時に帰任と書かれてある。
私は今日早上がりだからすれ違いかな。
お土産、楽しみにしてたんだけど。なんて邪な考えを振り払って、今日の業務を終えた。





「お疲れ様です」

「綾瀬さん、もう帰んの？ もうちょいでチーフたち帰ってくるけど」

「うん。お土産私の分忘れないように言っておいてね」

「めざといなー、ははは、お疲れ」





千切くんと終業前の会話をしてタイムカードを切り、社員証をフックにかける。
体が軽いな。最近は仕事に余裕が出てきたし、ジム もう一回通おうかな。



帰宅途中は何もかもに対してモチベーションが高いのに、家についた途端 私は凝った料理もしたくなくて適当に生姜焼きと前菜を作った後ソファに寝そべった。





「あー、お風呂入らなきゃ……」





色々やりたいことは多いけれど手を付けるまでが難しい。
テレビを見ながら何も考えず笑っているだけで有意義な時間に感じた。





「………――はい、綾瀬です」





それは午後９時に起こった。
脱衣所へ顔を出した時、リビングで携帯の着信音が聞こえた。


バスタオルを体に巻いて地団駄を踏みながら慌ただしく携帯を手に取れば、表示は『國神チーフ』とかかれていた。



何でもないふりをして４コール目で耳元に当てる。
向こう側は まだ外にいる様子だった。





『綾瀬、悪いなこんな時間に。今いいか？』

「はい、問題ないです。出張お疲れさまでした」

『ああ……。それで 契約が決まったから御影と一緒に飲みに来てたんだが、御影が泥酔しちまって』

「はい…！？ 色々問題ありますが…何で私に！」

『それが、御影がお前を呼べって一点張りでさ。仕方なく』

「仕方なくって……」

『悪いが俺も家族があるし帰らないといけないし、頼めねえかな？』





少々渋った後、愛妻家の彼に押し負けて電話を置く。
結局、先程落としたばかりの肌に、私は再び筆を乗せることになったのだった。





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