30-思い出 ページ32
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その後１週間同じような日が続いた。
あの３日間は私の中で幻になりつつあるのに、彼の変わらぬ態度だけが、それが現実だったんだと思い出させる。
楽しくないな。前まで、これで十分だったのに。
何てことない食事をして、毎朝同じ時間の電車に乗って、そつなく業務をこなす。
「綾瀬、風邪か？」
「國神チーフ。いえ、花粉症です」
「この時期もまだあんのか。お大事にな」
風邪を引いた。
一人で生きていくために自立した筈なのに、彼を再び知ってしまった今、同じ生活に戻りたくないと身体が拒否しているようだった。
同じ部署で毎日顔を合わせる彼とは、極力話さないようにした。
彼の近くに行かない、近づかない、目を合わせない。
存在を忘れるために、挨拶も３日目からはやめた。
「綾瀬さん、昼食行くけど」
「んー、今日実はお弁当持ってきてて」
「まじか。今度から俺も弁当作って来よ」
「あはは、食堂だよね。行ってらっしゃい」
「ん。すぐ戻るから」
隣のデスクの千切くんを最後に、あれだけ音が散らばるオフィスから音が消えた。
私一人、しんとした部屋で、机に突っ伏す。ガンとデスクに額をぶつけた。
何してんだろ、効率の悪い事ばっかり。
ひっそりと昼食を食べ終わってトイレから戻ってくると、丁度帰ってきた千切くんと先輩たちが私を見かけて「おっ」と声を漏らしながら、手に持っていたビニール袋を顔の近くまで掲げた。
「おかえりなさい。どうしたの、それ？」
「元気ねー花粉症に手土産。プリン好きでしょ？」
「えっ好き！ 本当に？」
「俺からじゃなくて先輩からだけど」
「先輩……！ ありがとうございます」
「早く元気になれよー姫」
ここのオフィスは年上のお姉さま方が結構多いから、数少ない若手の女である私を少なからず先輩たちは甘やかしてくれる。
貰った袋を開けてプリンを取り出せば、まだ中には何か隠れていたみたいだ。
「あーそれ、何か誰かがカゴ入れてたからそのままレジ通した」
「何か前綾瀬が食べてんの見た気がして」
「これ………」
軽いビニールの中には、グレープ味の棒付きキャンディが。
込み上げる熱を誤魔化すように咳払いをして、「ありがとうございます」と一礼した。
封を開けて口で転がせば、甘酸っぱくて切ない味がした。
彼をどこでも思い出してしまって、私は堪えるのに必死だった。
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おそらまめ(プロフ) - 砂時計さん» 砂時計様。よくわかってらっしゃる…。完璧な男が好きな女性を囲う為に色んな手を使って縋りつく姿をどうしても書きたくて（笑）夢主はきっと彼の思惑なんて一生気づかないまま捕まってるんです。それがいい。 (2023年5月6日 11時) (
レス) id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
砂時計(プロフ) - コメント失礼致します。我慢できず…言葉を綴らせてください。 甘やかして、それでも駄目なら、と縋り着く執着御曹司が素晴らしすぎてしんどいです。夢主ちゃんもがっつり捕まってて、玲王の策略なのかなと妄想すると更にエモい。これからも応援しております😭♡ (2023年5月4日 11時) (レス) id: 9f48da2d13 (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - ぺイさん» ペイ様、コメントありがとうございます！楽しんで頂けてるようで嬉しいです。沢山食べて味わってくださいね！次の更新をお待ちください。 (2023年5月3日 23時) (レス) id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
ぺイ - う、うあ〜！おいしすぎぃー！本当にありがとうござますっ！これからも追います！ (2023年5月2日 18時) (レス) @page40 id: 470dc29d1f (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - おにぎりさん» おにぎり様、コメントありがとうございます。ちゃんと重重な様子を描けてるか不安でしたがそう言って頂けて安心しました、こちらこそ大変光栄です。応援ありがとうございます、次の更新をお楽しみにお待ちください。 (2023年4月15日 19時) (レス) id: bb8d3426f9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おそらまめ
| 作成日時：2023年4月6日 19時
