22-秘密 ページ24
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朝の間何とか玲王を説得して、彼と時間差で出勤することに成功した。
電車で1時間弱もかけて10分前に到着すれば、先に到着していた玲王は私を見て「綾瀬さん、お早う」なんて何ともないように爽やかな笑顔を見せた。
「お早う、千切くん」
「おっ姫。昨日残業終わった?」
「うん、今日電車で終わらせてきた」
「すっげ、追われてんね」
「千切くんもね」
私を揶揄う割には彼のデスクの上は山積みにされたファイルでディスプレイが隠れていた。
新卒の教育、頑張ってるんだな。
私も教育任せられるくらいしっかりしないと。
作りたてほやほやの資料を印刷してチーフに提出後、会議に備えて準備を整えた。
「倉橋さん、本日はありがとうございます」
「いえ。綾瀬さんの資料かなり時間をかけられていたようで、とても分かりやすかったです。
次週もどうぞよろしくお願いします」
コンサルタントの方と会議室を一緒に出て、部署に戻る途中、正面から別部署の社員と親し気に話す玲王の姿が見えた。
…気にしないふり。お辞儀するだけ。
近距離まで来てぺこりと一礼する。
「綾瀬さん、週末の予定は?」
「っ……!」
「…綾瀬さん?」
すれ違う瞬間、誰にも気づかれないように、私の右手をするりと絡ませていった大きな手。
一度も私の方を見なかったくせに、こんなことで揺るがされるのが悔しい。
「っいえ、週末はショッピングの予定です」
「そうですか。好きな週末をお過ごしください。ではまた」
エレベーターに乗り込んだコンサルタントの方をお送りして、慌ててトイレに駆け込んだ。
ばくばくする心臓のせいで顔が熱い。
変に火照った頬と汗が噴き出していて急いで化粧直しをした。
「っしゃーやっと終わった! 休みだー」
「お疲れ千切くん、私ももう終わる―」
「あ、そ? どっか飲み行く?」
午後の業務も終えて隣で大きく伸びをする千切くんがこちらを見た。
「いいね」と返そうと私も彼に体を向けた直後、背後に大きく影が伸びる。
「わり、先に俺と飯行く約束しちゃってたわ」
「あ、え…御影くん?」
「……ふーん、あっそ。んじゃまた行こうぜ、綾瀬さん」
「あ、うん…お疲れ様」
玲王の顔を見た瞬間千切くんの顔が強張った気がした。
用意を済ませた彼を見送って、玲王も私に「帰ろうか」と催促する。
業務中は一切喋ってこないくせに、ずるい。
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おそらまめ(プロフ) - 砂時計さん» 砂時計様。よくわかってらっしゃる…。完璧な男が好きな女性を囲う為に色んな手を使って縋りつく姿をどうしても書きたくて(笑)夢主はきっと彼の思惑なんて一生気づかないまま捕まってるんです。それがいい。 (2023年5月6日 11時) (レス) id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
砂時計(プロフ) - コメント失礼致します。我慢できず…言葉を綴らせてください。 甘やかして、それでも駄目なら、と縋り着く執着御曹司が素晴らしすぎてしんどいです。夢主ちゃんもがっつり捕まってて、玲王の策略なのかなと妄想すると更にエモい。これからも応援しております😭♡ (2023年5月4日 11時) (レス) id: 9f48da2d13 (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - ぺイさん» ペイ様、コメントありがとうございます!楽しんで頂けてるようで嬉しいです。沢山食べて味わってくださいね!次の更新をお待ちください。 (2023年5月3日 23時) (レス) id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
ぺイ - う、うあ〜!おいしすぎぃー!本当にありがとうござますっ!これからも追います! (2023年5月2日 18時) (レス) @page40 id: 470dc29d1f (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - おにぎりさん» おにぎり様、コメントありがとうございます。ちゃんと重重な様子を描けてるか不安でしたがそう言って頂けて安心しました、こちらこそ大変光栄です。応援ありがとうございます、次の更新をお楽しみにお待ちください。 (2023年4月15日 19時) (レス) id: bb8d3426f9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おそらまめ | 作成日時:2023年4月6日 19時