13-沸点 ページ15
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午後の業務始まり、新しい議題の作成中、研修を終えた係長が出てきて、それぞれの教育係を任命した。
千切くんは男性の新入社員につくみたいだ。
私は手が空いたまま。
「綾瀬さん、今いいですか?」
「はい、問題ありません」
「14時のスケジュールは資料準備室でしたよね。
すみませんが御影さんに案内をお願いできますか?」
「はい、承知しました」
眉間の皴を寄せたまま係長が私を一瞥する。
私が頷いた時には、もうこちらを見ておらず係長室の扉は閉まっていた。
それから10分後、準備室のカードを貰って玲王と一緒に向かう。
何故か一言も喋らない玲王が不気味で私も言葉を発せなかった。
「どうぞ。カードの貸し出しは30分だから、間に合いそうになければ延長するね」
「分かった、ありがとな」
午後、初めての会話。
御影くんはご飯何食べたんだろう。
仕事と関係ない事を頭に浮かべながら資料準備室のファイルを手あたり次第漁る。
ふと、手元に影が落ちた。
見上げれば、背中にぴったり玲王がくっついて、覆いかぶさっている。
「…っえ、何…」
「――コンプレックスって、なに」
「はい?」
「大学のどの男に言われた? 名前は?」
頭上に置かれた手は分厚く張って青筋が浮かんでいる。
ただでさえ窓のない資料室は、玲王の影によってますます光を失う。
「何でそれ……え、どこで」
「教えて、誰に 何を言われたか」
「言ってもどうにもならないよ」
「どうにもならないと思ってんの」
有無を言わさぬ言葉に空気が浚われていく。
関係ないじゃん。玲王には、私の事なんて。
何でそんなに食い下がるの。
ただ過去の暗闇を思い出すだけなのに。
「……御影くんには、関係ないじゃん」
「どうしたら話してくれんの。俺何してでも聞き出すよ」
「どうやって…」
瞬間、シャツに手がかけられた。
流れる手つきでスカートからシャツが引き出され隙間から脇腹を擽られる。
「っちょ、御影、く……!」
「何、言わねえの。いいのかよ、こんな所で」
「っ……ほんと、やめて…!」
「教えてくれるならやめる」
熱い手が背中を伝って下着の紐に手をかけられた時
私は強い力で彼を突き飛ばした。
「っ何、考えてるの…!」
「………、ごめん」
見上げた彼は我に返ったように目を見開いていて。
口をつぐんで俯いた彼は、やがて一つ咳払いだけして、資料室から出て行った。
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おそらまめ(プロフ) - 砂時計さん» 砂時計様。よくわかってらっしゃる…。完璧な男が好きな女性を囲う為に色んな手を使って縋りつく姿をどうしても書きたくて(笑)夢主はきっと彼の思惑なんて一生気づかないまま捕まってるんです。それがいい。 (2023年5月6日 11時) (レス) id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
砂時計(プロフ) - コメント失礼致します。我慢できず…言葉を綴らせてください。 甘やかして、それでも駄目なら、と縋り着く執着御曹司が素晴らしすぎてしんどいです。夢主ちゃんもがっつり捕まってて、玲王の策略なのかなと妄想すると更にエモい。これからも応援しております😭♡ (2023年5月4日 11時) (レス) id: 9f48da2d13 (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - ぺイさん» ペイ様、コメントありがとうございます!楽しんで頂けてるようで嬉しいです。沢山食べて味わってくださいね!次の更新をお待ちください。 (2023年5月3日 23時) (レス) id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
ぺイ - う、うあ〜!おいしすぎぃー!本当にありがとうござますっ!これからも追います! (2023年5月2日 18時) (レス) @page40 id: 470dc29d1f (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - おにぎりさん» おにぎり様、コメントありがとうございます。ちゃんと重重な様子を描けてるか不安でしたがそう言って頂けて安心しました、こちらこそ大変光栄です。応援ありがとうございます、次の更新をお楽しみにお待ちください。 (2023年4月15日 19時) (レス) id: bb8d3426f9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おそらまめ | 作成日時:2023年4月6日 19時