10-事実確認 ページ12
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「パジャマは寝ぼけながら綾瀬さんが自分で着替えてたから俺何も見てねえよ。
けどごめん、化粧は肌に悪いと思って、勝手に落としちゃった」
「いやいや全然……ご迷惑をおかけして……」
え? というかそしたら今、私すっぴんで彼と話してるって事?
じわじわと羞恥心が沸き上がって、慌ててベッドの壁際まで後ずさりした。
疑問を浮かべて首を傾げる彼に、「あまり見ないで下さい」と俯きがちに告げると昔と変わらぬくしゃっとした笑みを浮かべた。
「十分可愛いのに」
「……っからかわないでよ…」
「あ、そうだこれ。良かったら食べてくれよ。朝ごはん」
「良いの?」
「ああ。簡単なものだけど」
私の為に玲王が用意してくれたんだ。嬉しい。
警戒心を解いてありがたくそのプレートを受け取る。
良い匂いの正体はこれかあ。
「……御影くん、いつもこれ食べてるの?」
「いや? 米の時もあるけど」
「そうじゃなくて! …ごめん、何でもない」
「え、嫌いだった?」
「だ、い、す、き、です!」
嫌いなわけあるか。
日本で指折りの高級店のパンだと、一目で分かった。
スーパーで売られている食パンの10倍はするただでさえ貴族の食べ物に、横付けで訳の分からない美味しいジャムがあった。凝られた味がする。
彼の資金力が怖い。
私なら昨晩迷惑をかけられた相手に対してこんな高級食パンを出す勇気はない。
一人で大事に食べる。
「あ! 御影くん今何時!」
「今? 7時半だけど」
「えっ!! やばい、遅刻する、」
柄にもなく慌てて残りの美味しいパンをこれまた上質なコーヒーで流し込んだ。
休日ならいつまでも味わってたい程に至福の朝食だった。
身支度を整えだす私を悠々と見下ろして、彼は軽く笑った。
「綾瀬さん、準備するっつったって、何にもできないでしょ?」
「……へ、あ…そうだ。着替えも、化粧品もない…。
終わった……。遅刻確定だ」
「綾瀬さん」
ちっとも威圧的な声じゃないのに、
その声は私の全ての行動を許さないと言っているようだった。
焦った心はそのままに、もういちど彼の方を向く。
「俺が必要だよな?」
「へ……?」
「何でも揃えるから、俺が必要だって言って」
変な気分だ。
正直彼にまた頼りたくない。
彼はそうじゃなくても、私が好きだから。
でも逆らえないと思った。
頭では否定していたのに、震える声は、彼の名を呼んでしまう。
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おそらまめ(プロフ) - 砂時計さん» 砂時計様。よくわかってらっしゃる…。完璧な男が好きな女性を囲う為に色んな手を使って縋りつく姿をどうしても書きたくて(笑)夢主はきっと彼の思惑なんて一生気づかないまま捕まってるんです。それがいい。 (2023年5月6日 11時) (レス) id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
砂時計(プロフ) - コメント失礼致します。我慢できず…言葉を綴らせてください。 甘やかして、それでも駄目なら、と縋り着く執着御曹司が素晴らしすぎてしんどいです。夢主ちゃんもがっつり捕まってて、玲王の策略なのかなと妄想すると更にエモい。これからも応援しております😭♡ (2023年5月4日 11時) (レス) id: 9f48da2d13 (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - ぺイさん» ペイ様、コメントありがとうございます!楽しんで頂けてるようで嬉しいです。沢山食べて味わってくださいね!次の更新をお待ちください。 (2023年5月3日 23時) (レス) id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
ぺイ - う、うあ〜!おいしすぎぃー!本当にありがとうござますっ!これからも追います! (2023年5月2日 18時) (レス) @page40 id: 470dc29d1f (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - おにぎりさん» おにぎり様、コメントありがとうございます。ちゃんと重重な様子を描けてるか不安でしたがそう言って頂けて安心しました、こちらこそ大変光栄です。応援ありがとうございます、次の更新をお楽しみにお待ちください。 (2023年4月15日 19時) (レス) id: bb8d3426f9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おそらまめ | 作成日時:2023年4月6日 19時