・-HS side- ページ5
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僕を助けてくれたAさんとヘジンヒョンは毎晩どこかへ出かけていく。
あの日、路地裏で泣いていた僕は初めて見るAさんが凄く怖かった。
頬にはいくつも傷跡があって、耳の先は少し欠けてしまっていて、差し伸べられた手には大きな歪んだケロイドが僕をのぞいている。
思わずヒョンに抱きついた。
「大丈夫だよ」
そう言って少し悲しそうに笑うAさんの顔が僕は未だに忘れられない。
その時凄く後悔したんだ。
僕に声をかけて助けてくれたのに怖がってしまったことを。
身体を覆ってくれた上着も、ヒョンと話しながら度々僕を気にかけるその瞳も、声も、凄く…凄く優しくてあたたかい気持ちになれた。
それと同時にどうしてそんなに怪我を沢山しているのか気になった。
家に着いたあと、美味しそうな香りにAさんの背中を見つめているとその瞳と僕の目が合った。
少し赤みがかった瞳は部屋のぼんやりとした照明に照らされていて僕は心臓が凄くドキドキとうるさくなる。
Aさんは綺麗な人だ。
濡れたような黒髪にツンとした鼻先、薄い唇は優しく弧を描いて幼い僕でも目が離せなかった。
「怖いかな」
そう言われて僕は何も言えなかった。
もう怖くなかったけど、僕はAさんを傷つけてしまったかもしれないと思って黙ってしまった。
ヒョンは今でも一緒に寝られる日は僕と出会う前のAさんの話を沢山してくれる。
どの話も人に、生き物に優しいAさんのエピソードで僕は胸を弾ませた。
かっこいいと、僕もAさんみたいになりたいと強く思った。
Aさんといると未だに胸が苦しくなって頭が熱くなる。
僕の事を気にかけてくれる度に凄く嬉しくて幸せな気持ちになった。
でも、反対にAさんは僕が大きくなる度に小学校での友達の話をする度にAさんに抱きつく度に凄く辛そうな顔をするんだ。
「……ん…」
ふと目が覚めて起き上がるといつものように隣にはヒョンが寝ている。
でもAさんがいなくて、僕は目を擦りながら扉を開けてリビングに出た。
月明かりに照らされたAさんが凄く妖しげで綺麗で僕の心臓がドクン、と一つ跳ねた。
「おいで」
Aさんに近寄ると膝の上に乗せてくれる。
向かい合うように顔を見合わせて、何だか僕は恥ずかしくなってAさんに身体を寄せた。
そうすると傷だらけの手が僕を優しく撫でる。
胸に当てた耳からはAさんの鼓動が小さく聞こえてきた。
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作者名：ユウたろー | 作成日時：2023年10月29日 23時
