◇52話 あの時2 ページ4
蒻「へぇ、それにしては上手いと思うよ。それでよくここまで成長出来たね」
言葉で聞くと感嘆を込めた褒め言葉に聞こえるかもしれない。
しかし、それを言った蒻雲の顔は全く笑っていなかった。だからその言葉は俺にとって嫌味に聞こえた。
え、怖。これが至って率直な感想である。
俺が黙ってしまったからか、蒻雲は笑みを浮かべ、「次の質問していいかな?」と聞いてきたので戸惑いながらも頷いた。
蒻「時間もないし、これが最後だね。…君のお姉さんは凄くバレーが上手いと思う。君は近くで見ていてその1番の秘訣はなんだと思う?」
なるほど、そうきたか。今までそういうの言葉にした事無かったけれども、思ったよりスラスラと喋ることが出来た。
「周りからの信頼だと思います。A姉ちゃん自身がチームのメンバーのコンディションとかを気にしたり仲間を信じてトスを上げている。そういうのって相手も同じだと思うんですよ。お互いが信じあってこそ生まれる攻撃とかもある訳ですし。
それに、姉ちゃんのチームのメンバーだけじゃなくて俺たち家族も姉ちゃんのことを信じています。母さんも父さんも姉ちゃんのやる気を見て、わざわざ私立の一花谷に行かせたんです。愛知で女バレが強いのはここだって言って。
もちろん俺も、姉ちゃんならこのまま全国狙える。中学でユース入りも夢じゃない、なんて。姉ちゃんのバレーを信じてるんです。だから姉ちゃんの1番の強みは周りからの信頼だと思うんです」
蒻「…………なるほど、周りからの信頼…か」
うわ、また怖い顔してるんだけど。
「どうかしましたか?」
蒻「あー、ううん、何でもないよ〜!それより取材受けてくれてありがとう。色々と参考になったよ、、えーと、ごめん、名前教えて貰っていいかな?」
「…倫太郎、角名 倫太郎っていいます」
蒻「それじゃ、倫太郎くん。色々と話してくれてありがとう、参考になったよ!また取材をするかもしれないけど、その時はどうぞよろしく。そろそろ試合始まる頃だと思うから楽しんでね、じゃあ俺はこの辺で。またね〜」
そう言って蒻雲さんはベンチから立ち上がり右手を軽く振りながら去っていった。
「あっ、さようなら。こちらこそありがとうございました」
一応挨拶はちゃんとしておく。
正直、掴みどころない人だったな。ちょっと気持ち悪いぐらいだ。
時計を確認するとあと5分で試合が始まるところだった。急いで戻らなくては。
そうして俺は、飲みかけの緑茶を右手に持ち、席取りをしてくれている母さんの元へと早足で向かった。
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霰霰 - この作品にどハマりしました!!!更新が楽しみです😆✨ (2021年12月31日 1時) (レス) @page10 id: c1e168e932 (このIDを非表示/違反報告)
ニコラスケイジ - この作品めっちゃ好きです!更新楽しみにしてます❤ (2021年9月29日 16時) (レス) @page5 id: 02838600ed (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:水色のエコバッグ | 作成日時:2021年9月21日 12時