第参拾捌話 遠くへ ページ40
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月日は流れ、炭治郎たちが狭霧山に来て2年。
額の左に日輪の描かれた狐の面を付け、鱗滝と揃いの羽織りを羽織った炭治郎。
____ついに、最終選別の日がやってきた。
こんこんと眠り続ける禰豆子の手を祈るように握り、腰に帯刀をする。
2年間で伸びた髪は顎の高さまで切られている。
優之心は、ずいぶんと凛々しくなった弟の顔を見、眩そうに目を細めながら土間へ出てきた。外には鱗滝が立っている。
「…それじゃあ、行ってきます。
必ず、生きて戻ってきます」
「ああ。儂も優之心も禰豆子も、此処で待っている」
「はい。2人のことよろしくお願いします」
炭治郎と鱗滝の会話を耳にしながら、優之心はちらりと小屋の中を振り返った。
陽の当たらない薄暗い部屋にひとり、禰豆子が眠り続けている。その姿は、2年前、鱗滝に寝かされた姿と何も変わりはない。
そして自分も、何も変わっていなかった。
鬼なのだから、当たり前なのだけれど。
「優之心にも声をかけていきなさい。
2年間、お前の特訓を見守り続けてきた」
「はい、もちろん!」
笑みを浮かべた炭治郎が近づいてきたので、優之心は炭治郎に目を戻す。できるだけ、自分も炭治郎に激励の言葉をかけてやりたいと、そう思っていた。
「ずっと見てくれていてありがとう。必ず生きて帰ってきて、鬼殺隊に入って、2人を元に戻すから……
だから、1週間だけ待ってて、
刹那、優之心の目が見開かれた。
______おはよう、兄ちゃん!
______兄ちゃん、俺、俺頑張るから。
いつから、幼さを感じる呼び方が変わっていた?
目の前に立つ炭治郎の目を見る。
気づけば、鎖骨あたりの位置にあった炭治郎の澄んだ瞳は、まっすぐ前の位置にある。
握手をするように握られた手は硬く、まめだらけ。もし自分が人間だった場合でも、大きさは越されているだろう。
いつから、こんなに大きくなったのだろう。
いつから、遠くへ行ってしまったのだろう。
そんな優之心の内心をよそに、炭治郎は「錆兎と真菰によろしく」と、手を振って駆けていってしまった。
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しろりん(プロフ) - 鬼滅の刃の原作沿いの中で一番この作品がお気に入りです...。兄主さん...素敵なお兄さんですね...。更新頑張ってくださいね!...早く善逸や伊之助にも会ってほしいな...。 (2022年5月7日 10時) (レス) id: 5f15beaff6 (このIDを非表示/違反報告)
猫を愛している者 - 続きは書かないんですか? (2020年8月15日 22時) (レス) id: f0ad13efd7 (このIDを非表示/違反報告)
南無南無(プロフ) - そうだったんですね!良かったです…!! (2020年2月22日 22時) (レス) id: e2dd911ff4 (このIDを非表示/違反報告)
仍(プロフ) - ヤトさん» ありがとうございます!返信遅れてしまって申し訳ありません… (2020年2月16日 14時) (レス) id: dec789af05 (このIDを非表示/違反報告)
仍(プロフ) - 南無南無さん» 終わってないんです!すみません!!漫画が手元に無いとお話が書けなくて、なかなか更新出来ずにいます…本当に申し訳ないです…更新お待ち下さい!! (2020年2月16日 14時) (レス) id: dec789af05 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:仍 | 作成日時:2019年9月16日 14時