第参拾漆話 人間の常識の場合 ページ39
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３人の間に、ひゅうと風が吹く。
先程までは柔らかだった風が、今は少し冷たい。
３人は、視線を合わせるだけ。
先に口を開いたのは、宍色の髪の少年 錆兎だった。
「…お前は、鬼だな」
その半ば問いでもない問いに、優之心はこくりと頷いた。
途端、また風がひゅうと吹く。
「…お前はなぜ人を喰わない」
声色が少し厳しくなる。
優之心は錆兎の手元にある木刀を見た。握り締める手が、震えている。
次に、顔を見た。
２人の顔は、狐の面で見えない。
『…ひとを、たべる……』
考えたこともない。
鬼になったことは実感している。確実に今まで生きてきた自分とは違うものがあるし、怪我はすぐに治る。
鏡を見るたび、自分の赤い瞳に驚く。爪の長さに驚く。
でも。
腹が減って、炭治郎たちと同じ食事を食べるとすぐに腹が満たされる。
夜は眠る。すると、体の疲れはなくなる。
炭治郎の怪我や血を見ても、痛そうだとか心配だとか、そういう気持ちしか湧かない。
だから、人を喰べるということなんて、考えたことがない。
『…ひとの、にくは…
たべぅ、ものじゃ…なぃ…から…』
だから、これは正当な理由である。
"常識"的に考えて、人間は喰べるものではない。
…ただそれは、"人間の常識"で考えた場合である。
「……はあ…」
「だから言ったじゃん。
そもそも人を喰べる鬼だったら、鱗滝さんが黙ってるわけないでしょ？」
「だが…」
「君が炭治郎の話してた優之心だよね？私は真菰でこっちが錆兎！よろしくね」
「おい真菰…！」
錆兎の呆れたようなため息の後で、今まで一度も口を開かなかった真菰が話し出した。
急に目の前に近づいてきた真菰に、優之心は驚き、後ずさった。
「あれ、びっくりさせちゃったかな？ごめん」
『ぁ…だ、だい…じょぶ…けど…』
ごめんと言いつつ下がる様子のない真菰。
真菰の背中に掛けられている刀に怯え、できれば下がってほしい優之心。
優之心の内心に気づきながらも、俺では止められんと首を振る錆兎。
これが、炭治郎の知らない、３人の出会いだった。
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しろりん(プロフ) - 鬼滅の刃の原作沿いの中で一番この作品がお気に入りです...。兄主さん...素敵なお兄さんですね...。更新頑張ってくださいね！...早く善逸や伊之助にも会ってほしいな...。 (2022年5月7日 10時) (
レス) id: 5f15beaff6 (このIDを非表示/違反報告)
猫を愛している者 - 続きは書かないんですか？ (2020年8月15日 22時) (レス) id: f0ad13efd7 (このIDを非表示/違反報告)
南無南無(プロフ) - そうだったんですね！良かったです…！！ (2020年2月22日 22時) (レス) id: e2dd911ff4 (このIDを非表示/違反報告)
仍(プロフ) - ヤトさん» ありがとうございます！返信遅れてしまって申し訳ありません… (2020年2月16日 14時) (レス) id: dec789af05 (このIDを非表示/違反報告)
仍(プロフ) - 南無南無さん» 終わってないんです！すみません！！漫画が手元に無いとお話が書けなくて、なかなか更新出来ずにいます…本当に申し訳ないです…更新お待ち下さい！！ (2020年2月16日 14時) (レス) id: dec789af05 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：仍 | 作成日時：2019年9月16日 14時
