検索窓
今日:70 hit、昨日:31 hit、合計:596,833 hit

第参拾陸話 夜闇に紛る狐 ページ38

(NO side)





月が、暗い大地を照らす。

時折心地の良い風が吹く音しかしない、静かな夜。




禰豆子はいつも通り眠ったまま。

鱗滝も床につき、小屋の中も音が無い。




しかし、







__________ずり









『…、…』



小屋の外で起きた小さな衣擦れの音に、元から起きていた優之心は顔を上げた。

掛け布団が肩からずり落ちたが、それを気にせず音の起きた方向___即ち、玄関の引き戸を見つめる。



『………』



______じゃり、ざざっ



『……た、じろ』



優之心は静かに立ち上がった。
そして、周りを見渡す。


隣で寝ている禰豆子は、起きる気配もない。
鱗滝は、少し動いた気がする。だが止めないのなら動いてもいいだろう。

掛け布団は禰豆子に掛けて、ゆっくりと歩き出す。
小さくなっている体のせいで着物の裾が引き摺られているが、優之心は気にも留めなかった。



玄関までたどり着いた優之心は、鱗滝が少しの間外出する時に履く下駄を履いた。本当は、裸足でも良かったのだけど、そんな気分にはならなかった。



大きい下駄と裾を引き摺って、引き戸をカラカラと開ける。


そこで優之心が目にしたものは、






『…………』

「…スー……」



泥だらけの格好で眠りこける炭治郎だった。



この日も炭治郎は、岩を斬るために山の上の方まで赴いていた。
何度も何度も、鱗滝に教わった訓練を繰り返し、岩が斬れるようになったかと挑戦しに行く。

ここ1年は、ずっとそんな毎日だった。



いつもなら夕食を終えた後は眠るだけなのだが、

「少しだけ行ってきます」

と言い、優之心が止めるのも聞かずに小屋を出て行ってしまったのだ。その様子を見て、鱗滝と優之心は揃ってため息をついた。


優之心はそんな弟が気がかりで、彼が帰るまで起きているつもりだった。




「スー…にい、ちゃん……」



羽織を握ったまま眠る炭治郎に優しい目を向けて、優之心は炭治郎から視線を外した。
そして、炭治郎をここまで運んできた人物に目を向けた。



優之心の視線の先には、2人の人影______狐の面をつけた宍色の髪の少年と、花柄の着物の少女。








錆兎と真菰が、暗闇の中に佇んでいた。




*********

更新お待たせして申し訳ありません。

.

第参拾漆話 人間の常識の場合→←第参拾伍話 人間らしさ



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (698 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
1502人がお気に入り
設定タグ:鬼滅の刃 , 男主
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

しろりん(プロフ) - 鬼滅の刃の原作沿いの中で一番この作品がお気に入りです...。兄主さん...素敵なお兄さんですね...。更新頑張ってくださいね!...早く善逸や伊之助にも会ってほしいな...。 (2022年5月7日 10時) (レス) id: 5f15beaff6 (このIDを非表示/違反報告)
猫を愛している者 - 続きは書かないんですか? (2020年8月15日 22時) (レス) id: f0ad13efd7 (このIDを非表示/違反報告)
南無南無(プロフ) - そうだったんですね!良かったです…!! (2020年2月22日 22時) (レス) id: e2dd911ff4 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - ヤトさん» ありがとうございます!返信遅れてしまって申し訳ありません… (2020年2月16日 14時) (レス) id: dec789af05 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 南無南無さん» 終わってないんです!すみません!!漫画が手元に無いとお話が書けなくて、なかなか更新出来ずにいます…本当に申し訳ないです…更新お待ち下さい!! (2020年2月16日 14時) (レス) id: dec789af05 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名: | 作成日時:2019年9月16日 14時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。