第参拾陸話 夜闇に紛る狐 ページ38
(NO side)
月が、暗い大地を照らす。
時折心地の良い風が吹く音しかしない、静かな夜。
禰豆子はいつも通り眠ったまま。
鱗滝も床につき、小屋の中も音が無い。
しかし、
__________ずり
『…、…』
小屋の外で起きた小さな衣擦れの音に、元から起きていた優之心は顔を上げた。
掛け布団が肩からずり落ちたが、それを気にせず音の起きた方向___即ち、玄関の引き戸を見つめる。
『………』
______じゃり、ざざっ
『……た、じろ』
優之心は静かに立ち上がった。
そして、周りを見渡す。
隣で寝ている禰豆子は、起きる気配もない。
鱗滝は、少し動いた気がする。だが止めないのなら動いてもいいだろう。
掛け布団は禰豆子に掛けて、ゆっくりと歩き出す。
小さくなっている体のせいで着物の裾が引き摺られているが、優之心は気にも留めなかった。
玄関までたどり着いた優之心は、鱗滝が少しの間外出する時に履く下駄を履いた。本当は、裸足でも良かったのだけど、そんな気分にはならなかった。
大きい下駄と裾を引き摺って、引き戸をカラカラと開ける。
そこで優之心が目にしたものは、
『…………』
「…スー……」
泥だらけの格好で眠りこける炭治郎だった。
この日も炭治郎は、岩を斬るために山の上の方まで赴いていた。
何度も何度も、鱗滝に教わった訓練を繰り返し、岩が斬れるようになったかと挑戦しに行く。
ここ1年は、ずっとそんな毎日だった。
いつもなら夕食を終えた後は眠るだけなのだが、
「少しだけ行ってきます」
と言い、優之心が止めるのも聞かずに小屋を出て行ってしまったのだ。その様子を見て、鱗滝と優之心は揃ってため息をついた。
優之心はそんな弟が気がかりで、彼が帰るまで起きているつもりだった。
「スー…にい、ちゃん……」
羽織を握ったまま眠る炭治郎に優しい目を向けて、優之心は炭治郎から視線を外した。
そして、炭治郎をここまで運んできた人物に目を向けた。
優之心の視線の先には、2人の人影______狐の面をつけた宍色の髪の少年と、花柄の着物の少女。
錆兎と真菰が、暗闇の中に佇んでいた。
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しろりん(プロフ) - 鬼滅の刃の原作沿いの中で一番この作品がお気に入りです...。兄主さん...素敵なお兄さんですね...。更新頑張ってくださいね!...早く善逸や伊之助にも会ってほしいな...。 (2022年5月7日 10時) (レス) id: 5f15beaff6 (このIDを非表示/違反報告)
猫を愛している者 - 続きは書かないんですか? (2020年8月15日 22時) (レス) id: f0ad13efd7 (このIDを非表示/違反報告)
南無南無(プロフ) - そうだったんですね!良かったです…!! (2020年2月22日 22時) (レス) id: e2dd911ff4 (このIDを非表示/違反報告)
仍(プロフ) - ヤトさん» ありがとうございます!返信遅れてしまって申し訳ありません… (2020年2月16日 14時) (レス) id: dec789af05 (このIDを非表示/違反報告)
仍(プロフ) - 南無南無さん» 終わってないんです!すみません!!漫画が手元に無いとお話が書けなくて、なかなか更新出来ずにいます…本当に申し訳ないです…更新お待ち下さい!! (2020年2月16日 14時) (レス) id: dec789af05 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:仍 | 作成日時:2019年9月16日 14時