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第拾玖話 泣くな ページ21

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そんな。

兄ちゃんが、兄ちゃんまで。



鬼に。






信じたくなかった。

兄ちゃんは頷いてはないのだから、本当は違うのかもしれない。そう思っていたかった。



でも。






「(そんな笑顔…初めて見たよ…)」





今にも泣きそうな、寂しい笑顔。


俺の記憶の中にいる兄ちゃんは、いつも元気そうで嬉しそうな笑顔だったのに。





「…なっ…んで……なんでだよ……!!!」





兄ちゃんの、禰豆子の、家族みんなの笑顔を奪った鬼は誰だ。どこにいる。

できることなら、今すぐに、俺の手で倒してやりたい。じゃなきゃ報われない。みんなみんな、報われない!!!!


拳を握り締め、下を向いて唇を噛む。


でも、下を向いていたら涙がこぼれてしまいそうで、ばっと勢いよく上を向く。


すると、困った顔をした兄ちゃんと目が合った。



「(…そうだ)」




今辛いのは、泣いていいのは俺じゃない。


兄ちゃんと禰豆子の方が、もっともっと辛いんだ。
辛くて、悲しいんだ。泣きたいんだ。

きっと兄ちゃんだって飢餓状態だ。すっごく我慢しているのかもしれない。



「(…泣くな。泣くな炭治郎泣くな!

ここで泣いたらだめだ!兄ちゃんたちを困らせるな!!)」




頭をブンブンと振って、泣きそうな気持ちを振り払う。

深く息を吸い込むと、冨岡さんが口を開いた。



「今は日が差していないから大丈夫なようだが、妹と兄を太陽の下に連れ出すなよ。

あとその兄には、ひとの血肉は見せない方がいい」




そう言って、冨岡さんの姿はなくなった。


俺はその言葉の意味を考えていたが、兄ちゃんは冨岡さんが立っていた場所をぼうっと見ているだけだった。



「兄ちゃん」



そう呼びかけると、こちらを向き、首をかしげる。

頼り甲斐のあった兄ちゃんがとても幼く、小さくなってしまったみたいで、新鮮とか寂しいとか、複雑な感情になった。



「一回、家に戻りたい。禰豆子を起こしてもらってもいいかな?」

『……、…』



無言で頷いて、いつもの朝のように、禰豆子を起こし始めた。


雪の上ということと、禰豆子が口枷をしていることを除けば、本当にいつもの朝のようだった。


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しろりん(プロフ) - 鬼滅の刃の原作沿いの中で一番この作品がお気に入りです...。兄主さん...素敵なお兄さんですね...。更新頑張ってくださいね!...早く善逸や伊之助にも会ってほしいな...。 (2022年5月7日 10時) (レス) id: 5f15beaff6 (このIDを非表示/違反報告)
猫を愛している者 - 続きは書かないんですか? (2020年8月15日 22時) (レス) id: f0ad13efd7 (このIDを非表示/違反報告)
南無南無(プロフ) - そうだったんですね!良かったです…!! (2020年2月22日 22時) (レス) id: e2dd911ff4 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - ヤトさん» ありがとうございます!返信遅れてしまって申し訳ありません… (2020年2月16日 14時) (レス) id: dec789af05 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 南無南無さん» 終わってないんです!すみません!!漫画が手元に無いとお話が書けなくて、なかなか更新出来ずにいます…本当に申し訳ないです…更新お待ち下さい!! (2020年2月16日 14時) (レス) id: dec789af05 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2019年9月16日 14時

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