第31話 ページ32
……これは何かの皮肉だろうか？
「ええ？不満？上手く描けたと
思ったんだけど。」
「あー……ううん。君の絵は上手いよ。
ただこれが私だって言われて
実感が湧かなかっただけ。」
まあ、絵だからっていうのもあるんだろうが、
美化されすぎてない？
「……君は随分と自分の評価が低いみたいだ。
君は綺麗だよ。真っ直ぐな瞳も、骨みたいな
白い肌も、君の強い意志も。」
描かれたページを優しく撫でる彼を見る。
なんだろう……すごく変な気分だ。
こそばゆいような、恥ずかしいような。
……っていうか、その視線から聞くと
スケルトンから見ての判断か。
なら、見方も価値観も違うのだから
彼がそう見えるなら、そうなのだろう。
これ以上は何も言うまい。
「それで！今日は色を塗るから
モデルしてくれたら嬉しいなぁ！」
「……私は別にいいけど。」
後ろを指差す。インクは恐る恐る振り返る。
そこには怖い形相を浮かべたエラーが立っていた。
「出ていけ、インク。」
糸でグルグル巻きにし、外の世界へと放り出した。
私の部屋の入口をさらに青い糸で張り巡らし
入れないようにした。
けど、彼は"インク"で何処にでも
入り込んじゃうんじゃ？
「少しは時間稼ぎになるだろ。話があってきた。」
エラーはその場に座ると私と向き合った。
いつもと様子が違うので思わず緊張してしまう。
「あー……悪かった。だが、あれは。」
「事故、でしょ。」
彼が何に謝罪したのかわかったので
あれは事故だったのだろう、と確認した。
そもそも彼の糸ではなかった。彼の糸は青。
けど、サンズ達を操っていた糸は"黒"だった。
彼は気まずそうに目を逸らしたまま頷いた。
彼は私のソウルを手に入れる為に訪れていた。
その目的も私を殺すことだったのだろう。
が、途中で邪魔が入ったそうだ。
「見たことのないAUがいたんだ。」
ーーー見たことのないAU？
つまり、新たなAUが誕生したのか。
もしかして以前、私を襲ったスケルトン？
「お前のソウルを手に入れようした俺の邪魔を
してきたから、相手してたんだ。そしたら、
急にあいつのソウルが暴走したんだ。」
そのソウルはプログラムに侵入し
バグを発生させたそうだ。
あの世界のコードは黒い糸で張り巡らされた。
プログラムに私をバグと判断させ
みんなを黒い糸で操り、排除させるように仕向けた。
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作者名：あゆさ | 作成日時：2020年12月2日 20時
