第10話 ページ10
*撮影現場裏より。
「サンズが足りない。」
机に手を伸ばして寝そべっていた
Aが急に起き上がり
キメ顔で変なことを言い出した。
無視を決め込むか迷ったが
それはそれで後が面倒そうだと思ったので
会話に参加することにした。
「いや、お前の場合、AUとも
連絡取り合ってるだろうが。」
「違うの!そうじゃないの!
ギューってしたい気分なの!!」
Aはたまに甘えたくなることがあるらしい。
本人はそれが甘えたいという感情だと
気付いてはいないが、妙に抱きしめたくなる時
それが彼女の甘えたいサインだと
俺たちは認識している。
いや、ケチャップに教えてもらっただけだけど。
辺りを見渡すが、俺以外にAUサンズがいない。
「マスタードお願い!一瞬だけ!ギュッてさせて?」
うっ……なんだその頼み方、可愛すぎかよ……。
いやいやしっかりしろ!俺!
相手はオタクのAだぞ!?
しかもサンズに関して異常に反応する変態だ!
「む……嫌なら仕方ないか。
クロスかベリーに電話しよ。」
ーーーーーは?
携帯を取り出したAの手首を掴む。
突然のことでビックリしたらしく
彼女は肩をビクつかせる。その反応が異様に可愛い。
「い、嫌とは言ってねぇだろ。……ん。」
両手を広げて待ち構える。
そうこれは単純な好意であって別に他に意味は無い。
Aはパアッと顔が明るくなり
思いっきり俺をギュッと抱きしめた。
なんかすげぇやわらけぇ。
ニンゲンってクッションの次くらいに
抱き心地がいいかもしれない。
と思っていたらあいつは直ぐに離れてしまった。
「あっ……。」
「ありがとう!!すごく元気出た!!」
……ってなんで俺の方が残念がってんだ?
急に恥ずかしくなってきた。
「マスタード?」
「っ!顔ちかっ……あー!くそ!
今回は俺しかいなかったから!仕方なく!」
「うん!大丈夫。次は頼まないよ。」
「は?」
「え?なんでキレるの?って痛い痛い!」
あいつの頬を抓って憂さ晴らしをする。
それはそれで面白くない!
「た、たまになら、別にいい。
そこまで、嫌じゃ、なかった。」
キョトンとした顔がこちらを見る。
俺は思わず視線を外す。
「そっか、じゃあたまに頼むよ。」
間抜けな顔で笑うA。
それなのに顔が熱くなって仕方なかった。
33人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:あゆさ | 作成日時:2020年12月2日 20時