第百四十六話 ページ46
それを見た彼は
もしかしたら元気が戻るかもしれない
最初はそんな理由で道場で様々な経験をさせた
ーーー彼女は天才だった
剣道、弓道、馬術……柔道以外の全て
初めてとは思えない出来栄えだった
彼は彼女を褒めると
『……大切な人が沢山教えてくれましたから』
誇らしげに微笑む
暗い表情は消えていた
これだ、と思った
彼女の心を救うことが出来る
彼は本気で教え込んだ
剣術ーーーーもっと強くなれ
弓道ーーーー精神を研ぎ澄ませ
馬術ーーーー気持ちを一つにさせろ
柔道ーーーー身を守れるのは自分自身だけだ
彼女の上達を共に喜ぶ
しかし、年数を重ねる事に彼女は
自分から距離をとっていることを感じていた
少々厳しく教えすぎたかもしれない
そう思ったが、周りのメンバーとも距離をとる
決して踏み入れさせない
自分の領域があるかのように
自分たちに深く関わることを恐れているようだった
剣道の夏の大会
「A、優勝おめでとう」
竹刀を手にした彼女に話しかける
中学生とは思えぬほどに冷静さを持っていた
その歳になれば思春期もあるだろうに
彼女は何一つとして変わらなかった
『……もう、いいです』
彼女はそう口にしてその場を後にした
その言葉の意味を知ったのは
次の大会の一か月前だった
彼女は大会に出場しないという
既に参加するための申請は出している
それを取り消すというのだ
「どうした？何がそんなに嫌なんだ？」
『どんな功績を残そうが、どんな立派なことを
成し得ようが、私には無意味です』
この頃の彼女は練習に参加するのが
日に日に少なくなっていった
週に一回来る程度のもの
それでも構わなかった
彼女の居場所を残す為にも
だが、彼は一つ勘違いをしていたのだ
両親を失った彼女の居場所はなくなってしまった
ならばこの施設が彼女の居場所になればいい
『私は何も望まない。この世界での居場所も
功績も、生きた証も……
私が望むのはただ一つ…………』
最後まで口にすることは無く
"なんでもない"と誤魔化し
そのまま道場を後にした
以降、彼女は大会に出ることはなくなった
「あいつは……決して深く関わろうとはしない
だからお前が来た時は驚いたさ
彼氏なんぞ連れてきおって」
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ゆき - いや当然ですよ！…スィ−ン一！ (2019年5月10日 19時) (
レス) id: cbcf733df5 (このIDを非表示/違反報告)
まな★★(プロフ) - ゆきさん» そういって頂き、感激です！ (2019年5月8日 6時) (レス) id: 7988c73045 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき - スマナイ、カミサクヒンダ、スマナイ！ (2019年5月7日 17時) (レス) id: cbcf733df5 (このIDを非表示/違反報告)
まな★★(プロフ) - ゆきさん» うーなんとも言えないです……ネタバレになっちゃうので、すまないw (2019年5月4日 18時) (レス) id: f47f4a70d0 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき - エ、エリちゃんが… (2019年5月4日 8時) (レス) id: cbcf733df5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：まな★★ | 作成日時：2019年4月8日 12時
