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時計の針は夕方の4時を回ろうとしてる。
5時から始まるリハーサルまでに会場に戻るよう、岡本さんは言ってた。
あれから、個々のドラムに集中して練習した。他のはイノちゃんが手足を被せて動かしてくれて。
手足を同時に動かしていくのに慣れたら、どこからかキーボードを持ってきたイノちゃんが伴奏を始めて、超スローなスピードから合わせていって。
伴奏しながら歌ってくれるイノちゃんの声が可愛くて、聴き惚れながら叩いていくのが楽しくなっていって。
始めて6時間後には本当のスピードについていけるようになった。
途中、イノちゃんとルームサービスをここぞとばかりに頼みまくって、この元生命体は、とかぶつぶつ言いながら平らげる姿に、なぜか癒されて。
そこからは無心で練習した。もう二度と個人的にこの曲は聴きたくないくらい、何万回と繰り返して。
それでも、
まだ、人に聴かせれるような演奏じゃないと思う。
「ユウトならできるよ。」
ネガティブな気持ちが払拭されるのは、イノちゃんが持つ不思議な力のお陰なんだろうか。
ピシッとベッドメイクされたままの2つのそれらは、結局使わなかった。
一睡もせずに練習に明け暮れた俺は、朦朧としてる。
一睡もせずに付き合ったイノちゃんは、シャワーを浴び終えてホクホクと湯気を纏わせて、
「ユウト、おいでぇ。」
バスローブ姿のまま両手を広げた。
素直にイノちゃんの腕の中に収まると、ふわりと優しく抱きしめられて、そのまま流れるようにベッドの上にダイブした。
「10分だけ、寝よう?」
「ダメだよ。今寝たら俺起きられない。」
「大丈夫。ちゃんと起こしてあげるし、起きたら楽になってるから。」
吐息がかかる程近い距離で、抱き合って横になってるイノちゃんは優しく微笑む。
綺麗な銀色の髪が頬をくすぐって、俺を包み込んでくれる彼の胸に顔を埋めた。
体が宙に浮かぶように、気持ちがいい。
柔らかくて、あたたかくて、永遠のように感じた。
「っ寝坊した!!」
「クス、10分だよぉ。」
「うそっ!だって俺すごい寝てたよ!?」
「ふふ、体が楽になったでしょぉー。」
時計を見ると次の日の4時半なんじゃないかと錯覚するくらい、
丸一日寝てたような気分だ。
「行こう。神さまが待ってる。」
「…うん。」
やっぱりイノちゃんは不思議な力で溢れてる。
だからきっと、
この胸の奥に生まれ始めた、言いようのない感情も、その力のせいなんだ。
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こさこ(プロフ) - とても素敵でわくわくするytinに久しぶりに出会えました。ストーリーも凄く面白くて、次回の更新が楽しみです。これからも頑張ってください! (2020年8月3日 5時) (レス) id: 4f9f600403 (このIDを非表示/違反報告)
Link(プロフ) - みるみるみるきーさん» みるきーさんありがとう!!!ひっさしぶりの更新…笑 ヤブウとはね、匂わせちゃうイノえもんだよねー笑 (2020年6月6日 23時) (レス) id: 1de82a156c (このIDを非表示/違反報告)
みるみるみるきー(プロフ) - わーい!!更新更新!うれしいー!!なんか、過去になんかあったのー??と思わせるような言い方は…裕翔が気になるよねぇ。あたしもなるwww (2020年6月6日 12時) (レス) id: a47283bf22 (このIDを非表示/違反報告)
Link(プロフ) - れいさん&みるきーさん☆うん、そう。気に入ってくれてありがとーーーっ笑笑 (2019年4月23日 10時) (レス) id: 10e8c83903 (このIDを非表示/違反報告)
みるみるみるきー(プロフ) - うんそう!あたしも大笑い!!好きっ!このノリ!! (2019年4月22日 20時) (レス) id: a47283bf22 (このIDを非表示/違反報告)
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