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フッとイノちゃんが目を伏せたことで、広がる宇宙空間にいた俺は、現実のホテルの部屋に戻っていた。
そのままイノちゃんは、
「あの子、お父さんが仕事で遠くにいるんだって。」
窓辺に近づいて淡々と話しながら、
「次に帰ってくるのは２月。その時を楽しみにしてる。」
指差すその先に、小さな男の子がお母さんと手を繋いで歩いてるのが見える。
「あの女の人は、産まれてくる赤ちゃんを心待ちにしてる。」
そう、次にイノちゃんの細い指が向いた先に女の人がいる。お腹を守るように歩いていくのが見て取れる。
「あの独り暮らしのお婆ちゃんは、年明けに息子家族が帰ってくるから今から何のご馳走作ろうかと考えてる。あっちのおじさんはこの前パチンコで擦って、今月のお小遣いは残り500円。それで奥さんにケーキを買って帰るみたい。」
次々と様々な人々を指差して、その内に秘めた人間模様を読み取っていくイノちゃんの意図することが、
わからない、とはもう言えない。
「人間だけじゃない。例えばこの昆虫っていう生命体。」
「っうわ！いつのまにっ、」
窓から入ってきてたカメムシに俺はビクついて距離を取るが、
「人間からは害虫なんて呼ばれてひどく嫌われてるけど、」
「う、うん。臭いんだよ、そいつ…、」
「これから越冬するために、仲間と隠れる場所を探してるの。」
「そ、そうなんだ…。」
「春になればまた出てきて、今度は子孫を残すためだけに必死で生きていく。人間に踏み潰されないように。」
それは、
この先の未来のために、生きている、
この星に存在する生命体の、
極自然な有り様だ。
「いつも、ここに希望を持っておきなさい。」
そう、俺の胸を優しく叩いてくれたのは、あの日のじいちゃん。
今でも、はっきりと覚えてるのに、
いつからだろう、
明日へさえ、希望が持てなくなったのは。
がむしゃらに毎日を過ごす、
いや、こなしていく、
だけになってしまったのは。
カメムシはゆっくりと、俺が床に投げつけたドラムのスティックの側まで歩いてる。
踏み潰したら臭いから、俺は見逃すよ。
スティックを手に取り、
「バスドラムって、難しい。」
イノちゃんにそう告げると、
「…ふふ、じゃあ一緒に練習しよ？ユウトはまず足の方に集中して。俺が手を動かしてあげる。」
ドラムセットを前に座った俺の両手を、彼は背後から優しく握って、
「わん、つー、さん、し、」
.
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こさこ(プロフ) - とても素敵でわくわくするytinに久しぶりに出会えました。ストーリーも凄く面白くて、次回の更新が楽しみです。これからも頑張ってください！ (2020年8月3日 5時) (
レス) id: 4f9f600403 (このIDを非表示/違反報告)
Link(プロフ) - みるみるみるきーさん» みるきーさんありがとう！！！ひっさしぶりの更新…笑 ヤブウとはね、匂わせちゃうイノえもんだよねー笑 (2020年6月6日 23時) (レス) id: 1de82a156c (このIDを非表示/違反報告)
みるみるみるきー(プロフ) - わーい！！更新更新！うれしいー！！なんか、過去になんかあったのー？？と思わせるような言い方は…裕翔が気になるよねぇ。あたしもなるwww (2020年6月6日 12時) (レス) id: a47283bf22 (このIDを非表示/違反報告)
Link(プロフ) - れいさん&みるきーさん☆うん、そう。気に入ってくれてありがとーーーっ笑笑 (2019年4月23日 10時) (レス) id: 10e8c83903 (このIDを非表示/違反報告)
みるみるみるきー(プロフ) - うんそう！あたしも大笑い！！好きっ！このノリ！！ (2019年4月22日 20時) (レス) id: a47283bf22 (このIDを非表示/違反報告)
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