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one drop ページ36

side Ryosuke



家に帰ると、母さんは当たり前のように、


「おかえりなさい、慧。」


と微笑んだ。



慧の部屋は、すっかり昔と同じ有り様に戻っていて、

皆既月食の赤い月に、連絡もせずに帰って来ない俺。

母さんは、こうなることを予想していたんだ。







もう、夕方だ。

窓から見える空が、淡い赤に染まってる。


母さんは、買い物行ってくる、今日はお魚だから。なんて、何も変わらないように微笑んだけど、慧の好きなものでいっぱいのご馳走を作る気だろう。






久しぶりだね、おれの部屋にふたりきり。

星を飛び越えてきた、あまりの長旅、疲れたよね。

そう、月曜日からさ、お遊戯会の練習始めるんだ。

衣装も先生たちで作るんだよ。持って帰ってくるから、慧も手伝ってよ。




話したいことはもちろんたくさんあるけれど、不思議と言葉が出てこない。


それよりも、汗が滲み合ってもまた自然と繋ぎ合う手を引いて、細いけれど柔らかな身体を抱きしめる。


お互いの温もりを感じながら、懐かしい香りを胸いっぱいに吸い込んで。


おれの、もう赤くはない瞳と、慧の淡い色の瞳を、自然と合わせる。


その、膨よかな唇が微かに開くのを見て、


おれも自分の唇を開いて、喉の奥から吐いてでた言葉は、



「「…あいしてる。」」



気持ちがいいほど、重なった。









そこからは、


空いた時間を埋めるように


互いの温もりを確かめ合うように


もう二度と、離しはしないと刻み込むように


言葉は交わさずに


何度も何度も、唇を重ね合わせて







飽きるほど、その瞳を見つめて、甘い唇を味わったら、心が満たされてくのを感じた。


ううん、今の撤回。飽きるわけない。









やっぱり、夕飯のメインは焼き魚だった。

鼻唄を歌いながら食卓に料理を並べる、わかりやすい母さんに、おれと慧は、顔を見合わせて笑った。


「…おいし…、」


箸を持つ手を震わせて、涙ぐんだ慧に、見て見ぬフリをして、


「慧はおれの部屋で寝るから。」


「風なんか吹いてないわよ?」


「一緒に星空を眺めるんだ。」


「…クス、変わらないわね、あんたたちは。」


なんて、今度はおれと母さんが笑い合った。



.

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ふるは(プロフ) - 初めましてかな。やまいのに釣られて読ませて頂きました。初めは悲恋なのかな?と思いましたが2人の幸せが見れて良かったです。読ませて頂いてありがとうございました。 (2020年5月28日 10時) (レス) id: e713ca3791 (このIDを非表示/違反報告)
Link(プロフ) - 相宮さん» お返事ありがとうございます!気づかず遅くなってごめんなさい。ご丁寧にありがとうございました。どうしても世界を救ってほしい内容ばっかりですが、また新しいのも書いてるので読んでもらえたら光栄です。ほんとにありがとうございました。 (2018年4月23日 10時) (レス) id: ce80a0a1da (このIDを非表示/違反報告)
相宮(プロフ) - すいません!感想が先行して挨拶を書きますれてました!改めましてはじめまして!改めて見直すと少しパーシーっぽさが出てますね!いえいえ、自分のストーリーを持っていることはすごいことだと思います!はい、楽しく見させていただきますね! (2018年4月16日 18時) (レス) id: 771b003506 (このIDを非表示/違反報告)
Link(プロフ) - 相宮さん» はじめまして!感想とっても嬉しいです!お気持ちが伝わりました。パーシーも知ってる上で面白いと言って下さり本当に光栄です。このように変わったお話ばかりですが、よければ他のお話も読んでもらえると嬉しいです。本当にありがとうございました。 (2018年4月16日 11時) (レス) id: ce80a0a1da (このIDを非表示/違反報告)
相宮(プロフ) - 感想が長くて申し訳ないのですが、すごく面白かったです!次回作も読ませていただきます!長文失礼しました! (2018年4月15日 2時) (レス) id: 771b003506 (このIDを非表示/違反報告)

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作成日時:2018年3月15日 5時

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