a drop of orion 2

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「りょうすけせんせえーっ！」


まだ慣れないその呼ばれ方を、惜しげもなく満面の笑みで呼んでくれる子どもたち。

園庭で取り囲まれる人数も、日に日に増えていく。


「おにごっこしよおー！」

「よーしっ、じゃあみんなあつまれー！」




実習でお世話になった幼稚園に、そのまま採用され、春から先生と呼ばれる立場になって早２ヶ月が経った。

園長先生を始め、職場のみんながとても親切で、丁寧に俺に教育してくれる。

子どもたちとは平気だけれど、先生たちと話す時はいつも緊張してしまう俺に、母さんくらいの歳の教育係の先生は、息子ができたみたいで可愛いと笑ってた。

大学時代に一生懸命練習したにもかかわらず、まだまだ下手くそな俺のピアノの伴奏に合わせて、子どもたちが大きな声で歌ってくれると、自然と頰が緩む。







「よかった、綺麗にみえる…。」


蒸し暑くなってきた初夏の夜。

今日は特別な日だから、今夜は絶対にその輝きを放っていて欲しかったんだ。


職場は家からバスで１時間半もかかるけど、ひとり暮らしをしようなんて選択肢は、俺にも母さんにもなかった。

母さんは何も言わないけれど、今夜のご飯が心なし豪華なのは、きっと母さんにとっても特別な日だから。



部屋に戻り、窓を開けると、青白く光るその星が綺麗に観える。


あまりに小さすぎるその星は、普通の人には到底見えない。


けれど俺の瞳には、寧ろその星しか映らないんだ。





「ピアノはまだまだ苦手だよ。慧がいたら教えてもらえたのに。いつもあの音楽室に忍び込んで、聴かせてくれたよね。学校帰りの楽器屋さんにもよく立ち寄ったの覚えてる？…っと、思い出話じゃなくて、俺のこと話さなきゃね。今日はね、朝のかけっこの時に…、」


( うん…、うん…、ふふっ…、)



俺が嬉しそうに話してると、隣で慧も笑いながら聞いてくれてる。


そんな気がするんだ。







「慧、誕生日、おめでとう…。」





一緒にケーキを食べなくなって、６回目の誕生日。



おれの、おめでとうが、届いてますように。



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