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「山田くん、だっけ?」
「……ああ、うん。」
「幼児教育科だよね?俺もなんだ。」
「…あ、そうなんだ。」
「あ、ごめんっ。おれ、有岡大貴!だいきでも大ちゃんでもいいから!」
「…だい、ちゃん?」
「あ、馬鹿にしたろっ?いつもそのあだ名で呼ばれてたの!」
「…はは、」
「よろしくな!」
大学に入って、初めて、友達と呼べる存在ができたらしい。
同じ学科の大ちゃんは、俺とは正反対。
明るくて、面白くて、いつも馬鹿みたいに元気だ。
ひとりで過ごすと思ってた大学生活は、彼のおかげで楽しいと感じてる。
将来、何になりたい?
いつだっただろう。台風の夜に、布団を並べて寝てた俺たち。
嵐のような雨風が窓を打ちつけるのが恐くて、紛らわすために聞いた質問。
「…将来?」
「うん、何の仕事がしたい?」
「………。」
そんなに変な質問したかな、って焦るくらい、長く続いた沈黙。
今ならその理由がわかるけどさ。
だって慧は、既に仕事に就いていたんだからね。
でもその長い静けさの後、
「…小さな子どもたちのために、何かしたい。」
慧はそう、優しい声色で呟いた。
「…先生ってこと?幼稚園とかの?」
「…うん、そんな感じかな。子どもたちのために役に立てたらいいな。」
きっと、この家に来る前にいた、孤児院かどこかで、小さな子どもたちに慕われていたんだろう、なんてその時は思ったけど、
それは、王室での話だったんだね。
慧なら、子どもたちに囲まれて、笑顔でいるのがとても似合う。
いつか、そんな姿が見たい。
なんて、その時の俺は思ったんだよな。
「涼介は?」
「え…、」
「涼介が将来したいこと、教えて?」
いざ自分が聞かれると、その質問はとても重たく感じた。
こんな眼をした自分を雇ってくれる会社なんて、幾ら探してもないだろう。
慧とは違う意味で、答えられずに、
雨風が激しく打ちつける音だけが響いていた。
その時、
「涼介こそ、小さな子どもたちに囲まれてるのが、とっても似合うと思う。」
慧に対して思ってたことが、俺に向けられたのは、
優しい慧が、気を使ったからだろう。
この道を選んだのは
いつの日か
慧にその姿を見せたかったから
なんて言ったら、笑ってくれるかな
.
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ふるは(プロフ) - 初めましてかな。やまいのに釣られて読ませて頂きました。初めは悲恋なのかな?と思いましたが2人の幸せが見れて良かったです。読ませて頂いてありがとうございました。 (2020年5月28日 10時) (レス) id: e713ca3791 (このIDを非表示/違反報告)
Link(プロフ) - 相宮さん» お返事ありがとうございます!気づかず遅くなってごめんなさい。ご丁寧にありがとうございました。どうしても世界を救ってほしい内容ばっかりですが、また新しいのも書いてるので読んでもらえたら光栄です。ほんとにありがとうございました。 (2018年4月23日 10時) (レス) id: ce80a0a1da (このIDを非表示/違反報告)
相宮(プロフ) - すいません!感想が先行して挨拶を書きますれてました!改めましてはじめまして!改めて見直すと少しパーシーっぽさが出てますね!いえいえ、自分のストーリーを持っていることはすごいことだと思います!はい、楽しく見させていただきますね! (2018年4月16日 18時) (レス) id: 771b003506 (このIDを非表示/違反報告)
Link(プロフ) - 相宮さん» はじめまして!感想とっても嬉しいです!お気持ちが伝わりました。パーシーも知ってる上で面白いと言って下さり本当に光栄です。このように変わったお話ばかりですが、よければ他のお話も読んでもらえると嬉しいです。本当にありがとうございました。 (2018年4月16日 11時) (レス) id: ce80a0a1da (このIDを非表示/違反報告)
相宮(プロフ) - 感想が長くて申し訳ないのですが、すごく面白かったです!次回作も読ませていただきます!長文失礼しました! (2018年4月15日 2時) (レス) id: 771b003506 (このIDを非表示/違反報告)
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