10 ページ10
「涼介、トイレ行こう。」
「へっ、あ、うん。」
繋いだ手が引かれ、列車の乗降扉の近くにあるトイレへ向かう。
乗降扉の前に、何人かが並んでいる。次の停車駅で降りる人たちだろう。
トイレのドアを開け、中を覗いた慧が、
「いいよ。なるべく早く終わらせて。」
そう告げる様に、また違和感を覚える。
置引きにあうと大変だ、とリュックを常に背負っていて、
全ての行動が落ち着かない。
トイレを済ませるとすぐに、コンコンとドアを叩かれ、
「っ、今でる！」
俺はズボンのチャックを閉め、慌ててドアを開けた。
「……け、い……？」
慧は、いない……？
え、なんで…、
離れるな、って言ったのに…、
胸がざわつき出して、ゆっくりとトイレを出た俺の、
「っ…！！！」
目に飛び込んだ光景に、驚愕する。
並んでた人たちが、倒れてる……
な、なんで……
その時、
ガタガタと、身体を震わせ始めた俺の背後で、
『みつけた。』
と、低い声が響いた。
声がした方に、恐る恐る振り返ると、
「ひっ…！！」
恐ろしいほど眼をギラつかせ、ニヤニヤと笑う、黒ずくめの男が立っていた。
「なっ…、な、に……っ…、」
激しく震え上がる俺は、咄嗟にその男から離れようと後退りしたが、
「っ…！！」
ドンッと、背中のリュックが壁に当たり、逃げられなくなる。
けい…
慧は、何処に……
「く、くるな……っ、」
震える声を必死にあげた俺の前まで、男はゆっくりと歩み寄り、
『オリオンの、魔法石。』
そう、不気味な笑みを浮かべ、手を伸ばす。
俺の、
左眼の方へ………
「う、うああああっ！！！」
思わず眼を閉じて叫んだその瞬間、
ドスッ…！！
と、鈍い音が響いて、
「涼介っ！降りるよっ！！」
プシューッと乗降扉が開いたのと同時に、何処から現れたのか、俺の手を掴んでホームに飛び出し走り出したのは、姿が見えなかった慧で。
慧に引かれるまま走りながら、一瞬だけ振り返った列車の乗降扉の所で、
倒れていた男が、
泡のように、
消えていった ＿＿＿
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 466人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「Hey!Say!JUMP」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Link(プロフ) - 青空と虹さん» 本まで読んだんですね！私は映画だけですが、同じく大好きなんです。こうしてパーシーのお話をできるのが嬉しいです。お話の続き、楽しみにしてくれてありがとうございます。私の話はぶっ飛んだ内容ばかりですが、楽しんで頂けるよう頑張ります！ (2018年3月9日 7時) (
レス) id: ce80a0a1da (このIDを非表示/違反報告)
青空と虹(プロフ) - Linkさん» 合っててよかったです！！パーシージャクソンは大好きで、本も全部読んでいたのですが、確かに山田さんに雰囲気似てるかも…！パーシージャクソンの片鱗を探しながら、楽しみに読ませていただきます^^* (2018年3月8日 14時) (レス) id: 66b7c3c525 (このIDを非表示/違反報告)
Link(プロフ) - 青空と虹さん» はじめまして！コメント読んだ瞬間ににやけてしまいました！ついにわかる人が！と。そうです、パーシージャクソンです！主人公の雰囲気が山田さんに似てるな(勝手な見解です)というとこから妄想を膨らませました笑 コメント本当に嬉しかったです。ありがとうございます (2018年3月8日 9時) (レス) id: ce80a0a1da (このIDを非表示/違反報告)
Link(プロフ) - chieさん» chieさん、いつもありがとうございます！コメント頂く度に励まされます！ふたりの行く末を見守ってください。楽しんで頂けるよう頑張ります！ (2018年3月8日 9時) (レス) id: ce80a0a1da (このIDを非表示/違反報告)
Link(プロフ) - めぐみさん» めぐみさん、ありがとうございます！大好きというお言葉だけで、このお話が救われます。続きを楽しみにしてくれてありがとうございます。これからもよろしくお願いします！ (2018年3月8日 9時) (レス) id: ce80a0a1da (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
