a drop of orion

43 ページ43

世界なんて、地球なんて


オリオンなんて、宇宙なんて


すべての命なんて


この、赤なんて




どうだっていいよ





おれはただ



「りょうすけ。」



慧に会いたい





会って、伝えたいんだ








ずっと言えなかった





ありがとう









ドクン＿＿



眼の奥が、熱い



ドクン＿＿



痛みが、消えてく



ドクン＿＿



血の味が、なくなる



ドクン＿＿



手のひらの傷が



「……っ…、」



赤く、光って



跡形もなく、消えていく ＿＿＿








静かに立ち上がった俺を、ケイトとユウトは、呆然と見つめてる。


そのままゆっくりとケイトの方に身体を向けると、


「…フッ、」


と笑って、拳を振り上げ襲い掛かってきた。


また殴られる！とは思わなかった。


させるものか、今度はおれが、


おれがっ……！！




無意識だった。


ケイトの目にも留まらぬ攻撃を、身体が交わしていく。


避けながら、交わしながら、


繰り出した、赤く光る拳が、


ズシュッ……


「っ…、く、」


ケイトの頰を掠めた。


「…っは……、」


自分でも、なにが起きてるのかわからない。



ただ、熱く、みなぎる


内から、この瞳の奥から


湧き起こる





「自分の力に変えるんだ。」


「…え…？」


「石が君に力を与えてくれる。」


ケイトは諭したようにそう促して、


「掠めただけじゃ合格にはできない。」

「っ！！」


シュッ！と、右脚を俺に目掛けて向けてきたと同時に、

俺はしゃがんで、そのまま彼の左脚を蹴り回した。


ドスッ…！


「くっ…！」


命中したものの、倒れそうになるのを堪えた彼の懐に入り、


そのまま、驚いて目を見開いた顔を目掛けて、


バゴォンッッッ……！！


赤く燃え上がるような拳を振るい向けた。



「っケイト…！」



ズシャアアァッッ……



「ハァッ…ハァッ…、」


立ち竦んで激しく息を切らす俺の、数メートル先、


「ハァ…ハァ…、」


衝撃で飛ばされ、地面に倒れ落ちたケイトを前に、


「ハァ…、」


熱くなった全身が波を打ち、震えた。




「…クス、」


上体を起こし、微かに笑ったケイトは、口から血を流してる。


「あ…あの、」


その様に焦り始めた俺を横目に、彼はユウトに目を向け、


「合格、でいいね？」


柔らかな声色でそう尋ねた。




「…ああ。剣を握れ、リョウスケ。今度は俺の番だ。」


ユウトはそう挑戦的に笑って、


「…はい。」


俺は心から強く、返事をした。


.

44→←42

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す