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列車の乗降扉から一番近い、誰とも向かい合わせにならない2人掛けの席を選んでくれたのは、俺のためだと思っていた。
誕生日を祝う旅行だと、自惚れてるのは間違いなんだろうか。
弁当や菓子でも食べながら、流れる景色を横目に、ふたりでいろんな話をして笑い合う。
そんな風に思っていたんだ。
9年近くも一緒にいる慧の、僅かな様子の違いも、俺には感じ取れる。
眼鏡の奥の、淡い色の瞳をぐるぐる回しながら、この列車に乗っている人たち、通路を通る人たちを、まるで監視するように隈なく見ている。
そして、握られたままの手から、微かな震えが伝わる。
「……慧、」
「…ん?」
呼びかけた俺に振り返り、自然な笑みを作った慧は、
「…どうかした?」
「…ううん。どうして?」
「…手、握ったままだから。」
「っあ、忘れてた…。へへ…、」
そう乾笑いして、俺の手を離した。
列車のスピードは想像以上に速くて、俺は初めての体験に少なからず緊張している。
「俺、トイレに行ってくる。」
そう、立ち上がろうとした俺の、
「っ、おれも行く。」
腕を掴んで抑えつけた慧に、席に戻される。
「…トイレくらいひとりで行ける。」
「……涼介、」
突然、真剣な表情で俺を真っ直ぐに見つめる慧に、
「…なに?」
俺は違和感しか感じなくて。
「これから、どんな時も、一瞬足りとも俺から離れないで。」
ドクン…… __
「……。」
なんで、って聞けなかった。
慧、おかしいよ。いつもと違うよ。って言えなかった。
あまりにも強いその瞳に、俺の赤が、微かに映ってて。
ああきっと、この旅は、この赤と関係している。
「約束して。」
こんな赤でも、慧の瞳に映れば綺麗だ。
「…うん、わかった。」
この9年間、どんな時でも俺の側にいてくれた慧に、断る術なんて見つかるはずなかった。
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Link(プロフ) - 青空と虹さん» 本まで読んだんですね!私は映画だけですが、同じく大好きなんです。こうしてパーシーのお話をできるのが嬉しいです。お話の続き、楽しみにしてくれてありがとうございます。私の話はぶっ飛んだ内容ばかりですが、楽しんで頂けるよう頑張ります! (2018年3月9日 7時) (レス) id: ce80a0a1da (このIDを非表示/違反報告)
青空と虹(プロフ) - Linkさん» 合っててよかったです!!パーシージャクソンは大好きで、本も全部読んでいたのですが、確かに山田さんに雰囲気似てるかも…!パーシージャクソンの片鱗を探しながら、楽しみに読ませていただきます^^* (2018年3月8日 14時) (レス) id: 66b7c3c525 (このIDを非表示/違反報告)
Link(プロフ) - 青空と虹さん» はじめまして!コメント読んだ瞬間ににやけてしまいました!ついにわかる人が!と。そうです、パーシージャクソンです!主人公の雰囲気が山田さんに似てるな(勝手な見解です)というとこから妄想を膨らませました笑 コメント本当に嬉しかったです。ありがとうございます (2018年3月8日 9時) (レス) id: ce80a0a1da (このIDを非表示/違反報告)
Link(プロフ) - chieさん» chieさん、いつもありがとうございます!コメント頂く度に励まされます!ふたりの行く末を見守ってください。楽しんで頂けるよう頑張ります! (2018年3月8日 9時) (レス) id: ce80a0a1da (このIDを非表示/違反報告)
Link(プロフ) - めぐみさん» めぐみさん、ありがとうございます!大好きというお言葉だけで、このお話が救われます。続きを楽しみにしてくれてありがとうございます。これからもよろしくお願いします! (2018年3月8日 9時) (レス) id: ce80a0a1da (このIDを非表示/違反報告)
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