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リュックひとつに、着替えを一着とレンズを洗う用品を詰めた。
いっても、3日くらいの旅行だろう。
慧は、俺を驚かせて喜ばせようと、何も教えてくれないんだ。
どこであろうと、ふたりきりで過ごせる、それだけで俺の胸は高鳴ってる。
「慧、準備できたよ。」
立て付けの悪い引き戸をノックしても、返事がない。
ギギ、と音を立ててその戸を開けた。
「………。」
久しぶりに入る慧の部屋。
いつも、家で過ごす時はテレビがある居間か、俺の部屋に慧が来る。
こんなに、殺風景だっただろうか。
片付けたのか…?
あるのは、学校の制服とカバン、そして机の下に教科書や参考書が並んでるだけ。
布団も、まるで客人が使ったかのように、綺麗たたまれていた。
それでも、机の上にいつも置いてあった写真立てはある。
けれど、
その中の、写真がない。
中学校に入学する時に、桜の木の下で、ふたり並んで写った写真。
写真なんて、大嫌いだった。
こんな顔を、眼を、記憶に残すことになんの意味があるのか。
あの日、一緒に撮りたいと言った慧を、そう睨みつけた。
「無理にとは言わない。」
そう儚く呟いた慧は、ずるいと思ったけれど、あの時一度だけだと、無表情で写った俺の隣には、満面の綺麗な笑顔。
その写真を丁寧に飾り、嬉しそうに見つめていた慧の横顔を、今でもはっきりと覚えてる。
「涼介、準備できた?」
「っ、うん…。」
背後から突然響いた声に、ビクついて慌てて写真立てを置いた。
「…あ、写真?」
「…いや、別に。」
「…クス、ここに入れてるんだ。」
そう言って慧は、リュックの中から小さなノートを取り出し、俺に見せた。
「なんで…、」
ノートの真ん中には、あの写真が挟まれてる。
「なんとなく。…おまもり。」
そうやって微笑む、慧の心理はわからない。
でも、単純な俺の心をあたたかくするのには十分だった。
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Link(プロフ) - 青空と虹さん» 本まで読んだんですね!私は映画だけですが、同じく大好きなんです。こうしてパーシーのお話をできるのが嬉しいです。お話の続き、楽しみにしてくれてありがとうございます。私の話はぶっ飛んだ内容ばかりですが、楽しんで頂けるよう頑張ります! (2018年3月9日 7時) (レス) id: ce80a0a1da (このIDを非表示/違反報告)
青空と虹(プロフ) - Linkさん» 合っててよかったです!!パーシージャクソンは大好きで、本も全部読んでいたのですが、確かに山田さんに雰囲気似てるかも…!パーシージャクソンの片鱗を探しながら、楽しみに読ませていただきます^^* (2018年3月8日 14時) (レス) id: 66b7c3c525 (このIDを非表示/違反報告)
Link(プロフ) - 青空と虹さん» はじめまして!コメント読んだ瞬間ににやけてしまいました!ついにわかる人が!と。そうです、パーシージャクソンです!主人公の雰囲気が山田さんに似てるな(勝手な見解です)というとこから妄想を膨らませました笑 コメント本当に嬉しかったです。ありがとうございます (2018年3月8日 9時) (レス) id: ce80a0a1da (このIDを非表示/違反報告)
Link(プロフ) - chieさん» chieさん、いつもありがとうございます!コメント頂く度に励まされます!ふたりの行く末を見守ってください。楽しんで頂けるよう頑張ります! (2018年3月8日 9時) (レス) id: ce80a0a1da (このIDを非表示/違反報告)
Link(プロフ) - めぐみさん» めぐみさん、ありがとうございます!大好きというお言葉だけで、このお話が救われます。続きを楽しみにしてくれてありがとうございます。これからもよろしくお願いします! (2018年3月8日 9時) (レス) id: ce80a0a1da (このIDを非表示/違反報告)
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