a drop of orion

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そんな時、王室を静かに見守る存在だった、かつての女王は、王室の皆に静かに語った。



あの者は、生命体ではない。


魔の化身だろう、と。



この宇宙に存在する、すべての生命体が持つ、魔の心が、奴を生み出した。


その目的は、オリオンの征服だけでは留まらない。

この地球を含む、すべての銀河系の星々、そして宇宙までも一掃しようと企んでいる。



かつて女王として星を治めていた彼女は、不思議な力を持っていた。

オリオンに降りかかる災いや天災などを、預言する力。

そしてそれは、幾度と星を救ってきたという。



「…その、人って、」


「…涼介の、曾お祖母様にあたるお方だよ。」


「……おれの、ひいばあちゃん…。」


「……半年前に、この世を去られた。」


「え…、」


「天に召される前に、彼女は、こう預言されたんだ。」




魔法石の力を、自らの力と変える、唯一の存在が現れる ＿＿


その者こそ、魔の化身を倒す可能性を持つ、たったひとつの希望 ＿＿



＿＿＿ 勇者が、かならず現れる ＿＿＿






あの男に、石の在り処を知られた今、一刻も早くこの石を取り出し、オリオンに持ち帰る。


そして、その未だ見ぬたったひとつの希望に、石を託さなければならない。







話し終えた慧の、震える手を握れる余裕は、今の俺にはなかった。


いつか憧れた。


スーパーヒーローが活躍する映画の、奇想天外なストーリー。

古い伝説の神話で彩られた、感動的な結末を迎えるおとぎ話。


世界、運命、未来を懸けた闘い。


息を呑むような展開が、繰り広げられる。





ああ、違う。


違うんだ。


おれはそんなもの求めてない。



普通で、変わり映えしない時間。


平凡でも、笑い合える時間。



歩幅を合わせて、通う通学路。


おはよう、おやすみ、を交わせる毎日。




それだけ。


それだけでよかったのに。



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