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通学路、あまり他人と顔を合わせないように俯いて歩く俺の歩幅に、慧はいつも自然に合わせてくれる。
「涼介、もう準備終わってる?」
「へっ、なんの?」
「もうっ、旅行の!明後日から行くって何度も言ったよね!?」
「あっ、うん、だいたい詰めたよ。」
「ならいいけど。必要な物だけだよ。余計なものは入れないでね。」
「うん、りょうかい。」
旅行、に行くことになったのは、明々後日が俺の17歳の誕生日だから。
明後日の早朝から出かける、と慧は俺に告げたけれど、行き先も、何日行くのかも、はっきりと聞かされてない。
俺は舞い上がってたんだ。
何故なら、慧と初めてふたりきりで旅行に行くんだから。
だから、学校を休んでまで行く理由と、仕事を休めないと言う母さんを置いていく理由も、考えなかった。
その時の俺は、それが普通の旅行だと思っていたから。
学校に着くと、慧はクラスメイトや違う学年の先輩にまで声をかけられる。
容姿端麗で、いつも笑顔で人当たりが良い。成績も上から数えた方が早いから、いつも俺に勉強を教えてくれる。
そんな慧と、友達になりたい、彼のことを知りたい、と周りが近寄るのは自然なことだった。
けれどみんな、いつもその彼の隣で暗い空気を醸し出す俺のせいで、深く踏み込むことはしない。
なのに慧は、片時も、俺から離れない。
学校にいる間も、登下校も、家でも風呂と寝る時以外はずっとずっと俺の側にいる。
俺がこの左眼にレンズを装着できるようになるのを待ち、同時期から小学校に通い始め、中学校、高校、とクラスまでずっと一緒。
俺は幸せだった。寧ろ、慧がいない生活、時間なんて考えられない。
けれど、慧は。
なぜ、どうして、と感じていたけれど、なにも聞けずにいた俺の心の内を諭したように、
「涼介の側にいたい。だから、いさせて欲しい。」
慧は真っ直ぐに俺を見つめ、それだけを伝えた。
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Link(プロフ) - 青空と虹さん» 本まで読んだんですね!私は映画だけですが、同じく大好きなんです。こうしてパーシーのお話をできるのが嬉しいです。お話の続き、楽しみにしてくれてありがとうございます。私の話はぶっ飛んだ内容ばかりですが、楽しんで頂けるよう頑張ります! (2018年3月9日 7時) (レス) id: ce80a0a1da (このIDを非表示/違反報告)
青空と虹(プロフ) - Linkさん» 合っててよかったです!!パーシージャクソンは大好きで、本も全部読んでいたのですが、確かに山田さんに雰囲気似てるかも…!パーシージャクソンの片鱗を探しながら、楽しみに読ませていただきます^^* (2018年3月8日 14時) (レス) id: 66b7c3c525 (このIDを非表示/違反報告)
Link(プロフ) - 青空と虹さん» はじめまして!コメント読んだ瞬間ににやけてしまいました!ついにわかる人が!と。そうです、パーシージャクソンです!主人公の雰囲気が山田さんに似てるな(勝手な見解です)というとこから妄想を膨らませました笑 コメント本当に嬉しかったです。ありがとうございます (2018年3月8日 9時) (レス) id: ce80a0a1da (このIDを非表示/違反報告)
Link(プロフ) - chieさん» chieさん、いつもありがとうございます!コメント頂く度に励まされます!ふたりの行く末を見守ってください。楽しんで頂けるよう頑張ります! (2018年3月8日 9時) (レス) id: ce80a0a1da (このIDを非表示/違反報告)
Link(プロフ) - めぐみさん» めぐみさん、ありがとうございます!大好きというお言葉だけで、このお話が救われます。続きを楽しみにしてくれてありがとうございます。これからもよろしくお願いします! (2018年3月8日 9時) (レス) id: ce80a0a1da (このIDを非表示/違反報告)
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