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「烏達とも明日の朝にはお別れか…。」
烏末さんは先程からこればかり言っている。もうすぐ日が沈む。鬼の跋扈し始める時間が来る。明朝の事を考えれば早く眠るべきであろうが、彼にはあまり関係が無いようである。この頃は鬼狩り様の任務に合わせて烏が働けるよう、烏末さんも夜中に訓練をしていたからかも知れない。ある程度の無理は響かないのである。
烏たちは今宵を以て、夜の眠りと暫しの別れである。野生でもそうだが烏は基本的に夜明けに起きて暮れ方に塒入りする。鎹烏として夜に活動する訓練はされていても、やはり夜に寝たいというのはあまり変わらないようである。
「うこぎ、うこぎ。」
声を掛けて行李を開けると、中で小さな小さな綿布に埋もれてすやすやと寝ていた。可愛らしいものである。金平糖の砕いたのがあった事を思い出したが、もう寝ているなら食べないだろう。
「Aのところは来年だったかい。」
「え、はい、ええそうです。」
放烏の担当の事を言っているのだろう。三戸の烏匠が順繰りに放烏しているので、来年は私。烏末さんはようやっと一息吐けるというわけである。
「いいねえ、頼もしいもんだなァ。
彌市も極楽で安心しとるだろう。」
彌市というのは私の父である。烏末さんと父は幼馴染みらしく、父の今際の時は烏の連絡を受けて夜中に飛び起きて来てくれたのだった。小さな村であるし、烏匠やら烏医者やら助け合ってやっているので元より仲は良かったのだけれど、父が病死してからは以前にも増して良くしてもらっている。
「俺の倅はいつまで経っても半人前でいかん。お前さんの爪の垢でも煎じて飲ませてやりたいよ。」
「私だってまだ半人前ですよ。それに息子さんだってご立派です。」
「そうかい。いや、彼奴は確かに頑張り屋だし心根の良い奴なんだよ。それにほら、上さんに似とるだろう。美人の顔だよなァ、あれは。」
酒を出された様子は無かったが酔っ払ってでもいるのだろうか。烏末さんの上さん話は聞き飽きているのである。確かに美人だけれども。
「こう…目尻のところが」
「明日も早いので私は先に寝ます。
おやすみなさい。」
「ああ、そうかい…。おやすみ。」
こんな特別な日は床に入って目を閉じても瞼の裏側でいろんなものを見るのである。母の採ってきた山菜、街で見たはいからな帽子、大して特別でもないそんなものを、どうして見るのかわからないが、そのうちすうと眠ってしまった。
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あさ(プロフ) - 光華さん» コメント自体は本当に有り難く嬉しいので、どうかお気を悪くされない事を祈ります。再度、コメントありがとうございます (2020年8月7日 7時) (レス) id: 280f636c3f (このIDを非表示/違反報告)
あさ(プロフ) - 光華さん» 頻繁に改行をするものではなく、この書き方は私のポリシーとして出戻る前から確立されています。幼い頃から沢山の本を読み漁って確立された価値観ですので、申し訳ありませんが変える事は出来ません。占ツクでは万人受けしない事は承知の上ですが、ご理解お願いします。 (2020年8月7日 7時) (レス) id: 280f636c3f (このIDを非表示/違反報告)
あさ(プロフ) - 光華さん» コメントありがとうございます。有り難い御意見ではあるのですが、途中で書きました通り指数が毎話ギリギリになってしまっていて、改行分の字数すら惜しいくらいになっています。それから、私の中での文章や小説というものは、(例によって字数が足りませんので続きます) (2020年8月7日 7時) (レス) id: 280f636c3f (このIDを非表示/違反報告)
光華(プロフ) - 行間をもう少し空けたらどうでしょうか (2020年8月7日 6時) (レス) id: e4678e2dff (このIDを非表示/違反報告)
あさ(プロフ) - stereogirlさん» コメントありがとうございます!とても励みになります。割とこだわっている部分なので、そう言っていただけて嬉しいです。これからも頑張りますのでお付き合いお願いします。 (2020年7月15日 0時) (レス) id: 280f636c3f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あさ x他1人 | 作成日時:2020年5月28日 1時