炎柱様 ページ38
風柱様ご訪問の翌日、村から少し離れた山での実地訓練に向かった。烏匠はあらゆる鬼除けをするけれど、烏達は実際に任に就いている烏と同じ装備である。因みにその山は産屋敷家管理のものではない、ただの普通の山であるので、当然鬼が出る事もある。実地訓練に態態赴く目的はと言えば、木の生い茂る山、見通しの利かない夜の時間帯などといった実際にあり得る条件を揃えるためであるので、仕方無いと言えば仕方無い。実際に鬼が出た場合はそこから隊士様を探してお伝えするという実践任務に変わる。それもそれで訓練としては悪くないけれど、普通に怖いので好ましくは思わない。
そして今、三日間の実地訓練から烏達と一緒に村に帰ったところだった。訓練中木に激突してしまった烏を烏医者に預けに行くと、烏末さんも一羽の烏を烏医者に預けているところだった。歳などを見たところ既に奉職して割と長い烏ではなかろうか。あれはどなたの烏だろう。自分で躾けた烏は兎も角、他の烏匠の世話した子まではよく解らないのだ。何百羽といるし、言っても烏であるので。
「あれはどなたの烏ですか。随分と元気が無いように見受けました。」
二人で烏医者の家を後にし、歩きながら問うた。すると、烏末さんは暫く口籠もるような素振りを見せた後、小さく溜息を吐いて口を開いた。
「…炎柱様が、身罷られた。」
「え。では、」
「あの子は炎柱様付の烏だった。」
上手く頭の中で処理が出来なかった。炎柱様と言えば、蝶屋敷に参った時に一度お見掛けした事があった。溌溂とした明朗闊達な方だった事を憶えている。む、君は誰だ!そうか!烏匠殿か!俺は炎柱の煉獄だ!いつも助かっている!烏末殿によろしく頼む!などと大層歯切れ良くお話になる方だった。去年の事だっただろうか。
「え、炎柱様、が…。そ、まさか、そう、そんな事が…。」
あの方は大層お若いのではなかっただろうか。私と変わらないくらいにお見受けした。そうだ、確か冨岡様の文の中で、煉獄は俺より若い身であるのに云云とあった。それなら私の兄よりお若いというわけだ。勿論、鬼狩り様の多くは歳若くして亡くなってしまう。皆様各各覚悟の上ではあろうし、柱様なのだから特にそこは覚悟していらっしゃっただろう。それでも。
「どうして…。」
そう思わずにはいられなかった。少し言葉を交わしたたけで、解ってしまったから。あの方がきっと中心になって鬼殺隊を担うべき人である事、そして人として素晴らしい方だった事を。
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あさ(プロフ) - 光華さん» コメント自体は本当に有り難く嬉しいので、どうかお気を悪くされない事を祈ります。再度、コメントありがとうございます (2020年8月7日 7時) (レス) id: 280f636c3f (このIDを非表示/違反報告)
あさ(プロフ) - 光華さん» 頻繁に改行をするものではなく、この書き方は私のポリシーとして出戻る前から確立されています。幼い頃から沢山の本を読み漁って確立された価値観ですので、申し訳ありませんが変える事は出来ません。占ツクでは万人受けしない事は承知の上ですが、ご理解お願いします。 (2020年8月7日 7時) (レス) id: 280f636c3f (このIDを非表示/違反報告)
あさ(プロフ) - 光華さん» コメントありがとうございます。有り難い御意見ではあるのですが、途中で書きました通り指数が毎話ギリギリになってしまっていて、改行分の字数すら惜しいくらいになっています。それから、私の中での文章や小説というものは、(例によって字数が足りませんので続きます) (2020年8月7日 7時) (レス) id: 280f636c3f (このIDを非表示/違反報告)
光華(プロフ) - 行間をもう少し空けたらどうでしょうか (2020年8月7日 6時) (レス) id: e4678e2dff (このIDを非表示/違反報告)
あさ(プロフ) - stereogirlさん» コメントありがとうございます!とても励みになります。割とこだわっている部分なので、そう言っていただけて嬉しいです。これからも頑張りますのでお付き合いお願いします。 (2020年7月15日 0時) (レス) id: 280f636c3f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あさ x他1人 | 作成日時:2020年5月28日 1時