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「お早う!A姉ちゃんいるかい?」
いつかも聞いたような台詞で元気な声が戸口から聞こえた。朝餉を食べ終えたばかりで、烏達もぎゃあぎゃあと機嫌良く騒いでいる。煩いがいつもの事なのでそのままにして戸口へ向かった。
「お早う、烏旭。」
「お早う!
爺ちゃん烏、もう薬が定着したから帰していいよ!」
赤ん坊のおくるみのように布に包まれた烏をずいと差し出された。この子と会うのも久方振りである。少し目尻が垂れてきたような気もする。もともと素直で温厚な性格だが、こうも柔らかい顔をしていると弱弱しく見える。可愛らしいから構わないが。
「ありがとう。お世話になりました。」
受け取ると、烏旭はじゃあね!と忙しなく駆けていった。実際忙しいのだろう。検診の終わった今も療養中の烏達がいるのだ。
さて、帰していいとは言われたが、どうしようか。と言うのも、冨岡様からの御返事には、暫く確りと身体を休ませてやるやうにと書いてあったのだ。家でも勿論不都合というわけではないが、如何せん家の烏達はこの烏に比べて若過ぎるというか、言ってしまえば騒がしい。休養をとるのに適した環境かと言われると難しい。
「
考えを巡らしていると、寛三郎さんが怖怖と口を開いた。早く帰りたいという口振りである。
「なあに、あなた早く帰りたいの。身体の疲れてはいないの?柱様にお付きだと任務も酷でしょう。
代わりの烏が行ってくれているから心配しないでいいのよ。暫く休んではどう?」
「儂ハ大丈夫ジャ…ソレヨリモ義勇ガ心配ジャ…。」
正直なところ、冨岡様のおっしゃるように身体を休めて欲しいというのが本音である。柱様の烏であるので、なるだけ万全の状態でいて欲しいし、私の感情としても無理をしないで欲しい。どう足掻いても高齢なのに変わりは無いのだから。
しかし今にも泣きそうな声音である。冨岡様の何がそんなに心配でこうも帰りたがるのか解らない。
「儂ハモウ老イ耄レジャカラ…死ヌマデニ少シデモ義勇ノ役ニ立チタイノジャ…。」
「…そうなのね。
けれどね、冨岡様もあなたの身体を大層心配なさっているの。三日、三日だけ休みましょう。あなたがしっかり休んで帰った方が、冨岡様も安心なさるわ、きっと。」
寛三郎さんは、ソウカノ…と項垂れて承知した。胸が痛んだけれど、その分しっかりと甘やかして休ませてやろうと思った。
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あさ(プロフ) - 光華さん» コメント自体は本当に有り難く嬉しいので、どうかお気を悪くされない事を祈ります。再度、コメントありがとうございます (2020年8月7日 7時) (レス) id: 280f636c3f (このIDを非表示/違反報告)
あさ(プロフ) - 光華さん» 頻繁に改行をするものではなく、この書き方は私のポリシーとして出戻る前から確立されています。幼い頃から沢山の本を読み漁って確立された価値観ですので、申し訳ありませんが変える事は出来ません。占ツクでは万人受けしない事は承知の上ですが、ご理解お願いします。 (2020年8月7日 7時) (レス) id: 280f636c3f (このIDを非表示/違反報告)
あさ(プロフ) - 光華さん» コメントありがとうございます。有り難い御意見ではあるのですが、途中で書きました通り指数が毎話ギリギリになってしまっていて、改行分の字数すら惜しいくらいになっています。それから、私の中での文章や小説というものは、(例によって字数が足りませんので続きます) (2020年8月7日 7時) (レス) id: 280f636c3f (このIDを非表示/違反報告)
光華(プロフ) - 行間をもう少し空けたらどうでしょうか (2020年8月7日 6時) (レス) id: e4678e2dff (このIDを非表示/違反報告)
あさ(プロフ) - stereogirlさん» コメントありがとうございます!とても励みになります。割とこだわっている部分なので、そう言っていただけて嬉しいです。これからも頑張りますのでお付き合いお願いします。 (2020年7月15日 0時) (レス) id: 280f636c3f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あさ x他1人 | 作成日時:2020年5月28日 1時