【鬼滅の刃】鎹烏の訓練士【冨岡義勇】

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「そのうち見せておくれよ。」

優しく笑んだ兄の顔を見て、はいはいそのうちにねと言い返そうとして、言葉が詰まった。そのうちというのはいつ？だって兄は死と背中合わせに生きる人で、今生の命を鬼狩りに捧げた人で、命を落とせば向かう先はきっと地獄で、ああ、だから。そのうちにとか、今度とか、そういう言葉は兄にとってどれほど頼りないのだろうか。

「そうですね、私も今度は二十ですし、考えなければ。」

せめて、私に叶えられる願いくらい、叶えなければ。きちんと考えなければ。私がどういう人間なのか、どういう人の妹なのか、兄がどんなに私を想ってくれているのか、私は多少なりとも解っているのだから。

そう言えば私、今日求婚されたのだった。されているときは何を言われているのかよくわかっていなかったけれど、後から胡蝶様に説明されたのだった。曰く、あれは新種の求婚であるので怪しげな事を言われたらお断りすることも大事だ、基本的に人畜無害であるけれども不快なのならふん縛って吊し上げても私が文句を言わせない、どいつもこいつもですよ、云云。

「うん、楽しみだなあ。ようやく解ってくれて嬉しいよ。」
「あの、でも、兄さん、私、今日求婚されました。」
「はい？？」

途端目を見開き口を半開きにして唖然とする。この表情はあまり見られないので、それに兄が入隊してからは年単位でしか会わないので、気持ちとしては初めて見るくらいの表情だった。

「え、待って。説明、説明を、Aさん。」
「今日ここに来る前に蝶屋敷に行ってきました。そうしたら、隊士様から求婚されました。
　いえ、私よく解っていなかったんです、あれが求婚だと。胡蝶様がそうおっしゃっただけで。」
「胡蝶様がおっしゃるなら間違いないだろうよ。どこの馬の骨だ、言ってごらん、ええ？」
「馬の骨とはおっしゃりようですね。
　この間入隊なさった方ですから、兄さんはきっとご存知ないでしょうが、我妻善逸さんとおっしゃいましたよ。元鳴柱様の門下の方で、御髪が金糸雀のような色でした。と言っても西洋のお人には見えませんでしたけれど。」

珍しい髪の色だと思う。柱様方は珍しい髪色の方も多いから、我妻さんも行く行くは柱に登り詰められるかも知れない。まさかそれが条件ではないだろうけれど、共通点というのは馬鹿に出来ないものだ。

「でも、お受けしたりはしていませんよ。」

当たり前だと目を剥く兄。早く結婚して欲しいのではなかったのか。面倒な人である。

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