にんじん きらい 。

#28 ページ29

「どうしたの、何かあった？」


私を抱きしめるてっちゃんの腕を、ぽんぽんと叩く。


て「A、俺今真剣に話しとるんよ？」


「…うん」


て「俺がAの事好きだったら、嫌？」


「…え、嫌じゃないよ、嬉しいよ」


て「じゃあ俺と付き合ってって言ったら？」


「……」




今まで、ずっと逃げてきたつもりだった。

もしかしたらてっちゃんは私が好きなのかも、って思うことも多々あった。
ただそれは私の自意識過剰、てっちゃんは私のことを友達としてみてるんだって思い込んできた。

だけどこんな風にされると、もう逃げようがない


答えなきゃ。

何か言わなきゃ。


わかってるけど、言葉が何も浮かばない。


しばらく何も言えないままでいると、てっちゃんの腕がスッと離れた。



て「ごめん」


「…うん」


て「けど俺、Aの事好き。それだけはわかって」


「…」


て「ごめんね、俺ちょっと出てくる。」



テーブルに置いてある車の鍵をとるとき、てっちゃんの頬に涙がつたっていたのが見えた。


結局私は何も言えないまま、玄関のドアが閉まる音だけが部屋に響いた。


てっちゃんを泣かせてしまった、

私が何も言えないせいで、逃げてばかりのせいで。



苦しい…



気付くと、ぽろぽろと涙が溢れていた。

自分がどうしたらいいのかがまるでわからない。


大好きだよてっちゃん。


でも私ね、


としみつもりょうくんもしばゆーも、
虫さんもゆめまるも同じくらい大好きなの。






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