【降谷零】ラブ・ファントム【安室透】 (ページ2)

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002.君はファントムページ2

「つまんない…」

一言、私の口から漏れた言葉は広い空間の中ではまるで蚊の様に小さな音だった。
その時、階段を下る音がして慌てて席に着き、対応の準備を整える。
ドアが開いて顔を覗かせたのは、見慣れない顔だった。

金髪で、顔がハーフの様に整っている。
ただ、スーツをきっちり着こなしていて好印象だ。
ゼロの中には仏頂面で恐い人も沢山いる。

「F1256の資料をお願いします」

彼は私の顔を見てそう言った。
何だろう、すごく色気を感じる声に表情、雰囲気。

「お名前をフルネームでお願いします」
「降谷零です」

降谷…零…
名前もカッコいいなんて反則だろう、と思いながらパソコンに名前を打ち込む。
ここで彼の顔写真と所属課が表示され初めて資料を渡せる流れになる。

降谷零、29歳、警察庁警備局警備企画課。
間違いなくゼロの人だ。

「確認が取れましたので、お持ちします。F1256ですね」

私は椅子から立ち上がり、莫大な資料室を歩く。
ただ迷うことはあまりなく、足を進め、F1256の資料を取り出す。
それにしても分厚い資料だ。

「これで間違いありませんか？」

彼の前の机に置き、彼が少しページを捲り、間違いありませんと頷いた。
降谷さんは分厚い資料を片手で持ち、ドアまで歩き

「ありがとうございました」

そう少し笑ってドアの向こうに行ってしまった。
私はパソコンでもう一度、降谷零と検索をかける。

このパソコンはゼロ専用のパソコンなので、これもまた他の課に見られることも漏洩する心配もない。ここには、ゼロの勤務形態が載っている。もし、資料の紛失や返却がない場合、こちらから問い合わせられる形になっているからだ。

職務濫用な気もするが、私は彼の資料をまるで宝箱を開ける時の様に少しドキドキしながら見た。

「今日はずっと警察庁なのね…明日は朝8時から午後1時まで潜入先、午後2時から午後8時まで警察庁出勤、午後9時から潜入先…」

1週間の勤務形態が表示されているが、降谷さんは休憩時間がほぼない。
そう考えると今日ここに来てくれたのは奇跡だったのかな…なんて。
そんなことを考えていると、ふと隼人さんの顔を思い出して、そこからは降谷さんを思い出すのをやめた。