すくい ページ11
引き伸ばして、か。
どうにか、どうにかならないものなのか。必死に考える。
大学時代の真冬…いや、相川先輩の言葉を必死に思い出す。
「時間を引き伸ばしたい時は質問するといいよ。」
「質問されるとそれに対する回答を考えなきゃいけないからね。」
「なるべく文章を複雑にするともっといいかな。」
『ねえ、俊哉。』
「あ？なんやねんはよしろよ。」
『俊哉はさ、もし私が妊娠したら、責任とって一緒に育ててくれるの？』
「はぁ？んなもんとるわけないやろ。今更何言っとんねんww」
こいつ、ほんとにバカだな。
知らないのかな、私がずっとこいつの問題発言も、嘘も、全部録音してるって。
いや、知らなくていい。
実際にお金を送ってるのは私の実家ということも、
子供ができても責任をとらないということも。
お母さん。私はもっといい人を見つけることが出来ました。
お父さん。お父さんが心配するべきなのは真冬ではなくこいつの頭ですよ。
真冬、あとは君さえ来てくれれば。
ピンポーンという軽快なチャイムな音。
救いの鐘の音がした。
来てくれたんだね。きっと急いで。
「ちっ、なんやねんタイミング悪いな…俺が見てくるからそこで待っとけ。」
玄関から真冬の声。
「そこに僕の彼女がいるんですけど…」
「はぁ？んなもんおらんわ。」
「あなたも知っているでしょう？AAさんですよ。中にいるのでしょう？」
「あいつは俺の許嫁や。」
「いいえ、僕の彼女です。…A、もしいるなら出てきて。」
荷物をまとめて玄関へ出る。
そこには、
「出てくるのが遅い。ほんっとに心配したんだからね…」
最愛の人。
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作者名：リリー | 作成日時：2021年10月19日 1時
